ホンモノ?ニセモノ?誰が決めるの? 贋作騒動「日本の作品、俺が描いた」と豪語する画家が投げかける問い
日本で展示されていた西洋画に贋作が交じっていた疑いが浮上している。徳島と高知の美術館がそれぞれ約7千万円と2千万円で購入した所蔵品だ。真贋は調査中だが、これらを描いたと自称(自供?)するドイツ人男性がスイスに住むと聞きつけ、直接話を聞きたいと願い出た。事実ならゆゆしき事態だ。芸術愛好家として息巻いていると「じゃあ湖畔のアトリエで。客室もあるから泊まれるよ」と軽快な回答を受け取った。少々面食らいながらも、どんな人物なのか見極めにアトリエに向かった。現れたのは、つばのついた帽子に長髪、サイケな装いをした「キャラ濃いめ」の年配男性。美術界を震撼させた贋作騒動を巻き起こした張本人、ウォルフガング・ベルトラッキ氏(73)の口から語られたこととは―。(年齢は取材当時、共同通信ジュネーブ支局長 畠山卓也) 【写真】45人死傷事件の植松死刑囚が描いた絵とは…何らかの心境の変化が? 死刑執行の瞬間とみられるシーンを描く死刑囚も 21年
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽やりたい放題? アトリエがあるというスイス中部ルツェルンは、西部ジュネーブから電車で3時間強。中世の建築と眺めの良い湖で有名な観光地だ。中心部から車で20分ほどでアトリエに到着した。かつてゲストハウスとして使われていた建物のダンスホールを改築したものだ。 迎えてくれたベルトラッキ氏は、10年以上前に世界の美術界を騒がせた絵画偽造事件の中心人物で、2011年に実刑判決を受けた。服役後は自分の名前で画家として活動。出版やドキュメンタリー映画への出演、講演なども行っている。 その知名度を生かし、Tシャツの通信販売や、複製が困難なデジタル資産「非代替性トークン(NFT)」の発行なども手がけている。一言で言うなら〝やりたい放題〟だ。 ▽30年以上も贋作と知らず 日本での騒動の始まりは、2024年6月。徳島県立近代美術館が海外メディアのベルトラッキ氏に関する報道を確認したところ、贋作として紹介された中に、美術館が所蔵するフランスの画家ジャン・メッツァンジェ作とされる「自転車乗り」があったのだ。