ホンモノ?ニセモノ?誰が決めるの? 贋作騒動「日本の作品、俺が描いた」と豪語する画家が投げかける問い
その報道はさらに、ドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンク作とされる油彩画「少女と白鳥」も贋作だと指摘していた。その絵は以前、高知県立美術館から徳島県立近代美術館に貸し出されたことがあるものだった。 この2枚について、ルツェルンのアトリエでベルトラッキ氏に改めて尋ねると、「自分の絵」だと堂々と答えた。そして「なぜ調査が必要なのか」と述べ、苦笑いした。描いた本人が自分の作品だと認めているのだから、調査するまでもないと言いたいのだろう。 驚くべきことに、ベルトラッキ氏は、もう1枚別の贋作が日本にあると証言した。フランスの女性画家マリー・ローランサンが描いたとされる肖像画「アルフレッド・フレヒトハイムの肖像」だ。所有者とは既に連絡を取り、電話越しの男性は極めて流ちょうなフランス語を使っていたという。ベルトラッキ氏は「彼は驚いてはいたが、怒っていなかった。『大切に保管する』と言っていた」と振り返る。
3枚を描いたのはいずれも1980年代後半から1990年代前半ごろだという。贋作が事実だとすれば、3枚の高価な絵がでっち上げられていたことが、30年以上も明るみに出ていなかったことになる。 ▽「絵は傑作だ」 日本の美術館や来館者をだましていた点について聞いた。するとベルトラッキ氏は「だましたとは思わない。絵は素晴らしく、傑作だからだ」とまたもや即答した。悪びれる様子はなく、むしろ胸を張るようだった。「画家の技法を偽ったのは申し訳ない」と話したが、絵の制作そのものに後悔はないと断言した。 作品を偽ったカンペンドンクらは、ベルトラッキ氏が若い時から大好きな画家だったといい「私の(偽物の)絵によって、さらに価値が高まった」と主張した。実際、贋作の中で最も高額なものはカンペンドンク作と称した作品で、2006年に競売で280万ユーロ(現在のレートで約4億5千万円)もの値が付いた。 ベルトラッキ氏自身の名前で描いた絵は現在、作品によってはそれに近い値段で売れ、安くても60万ユーロほどするという。