【スプリンターズS】ロードカナロアが「1.3倍」で連覇達成、過去には「257.5倍」の一撃も 秋の短距離王決定戦を「記録」で振り返る
最低人気で勝利したダイタクヤマト
そのマイネルラヴがタイキシャトルを撃破した時の単勝オッズは37.6倍だった。 当時のスプリンターズSは12月の開催で、同年にセントウルSを制していたものの、前走のスワンSで7着に敗れていたこともあり、7番人気の評価に留まった。なお、単勝オッズ37.6倍での勝利は、スプリンターズS勝ち馬としては1986年以降で3番目に高い数字となる。 スプリンターズSの勝ち馬として、単勝オッズが最も高かったのは、2000年の勝ち馬ダイタクヤマトの257.5倍。それに続くのが2014年スノードラゴン(46.5倍)、上述の1998年マイネルラヴ(37.6倍)となる。 スノードラゴンはデビューからダートを主戦場としてきた馬で、それまでにあげた7勝は全てダート。芝での初勝利がGⅠスプリンターズSという、記録的な名馬だ。この年はオーシャンSで2着、高松宮記念でも2着、北海道スプリントCで2着と芝ダートの両方で馬券圏内にきていたが、それでもスプリンターズSでは13番人気の低評価だった。 また、スノードラゴンはアドマイヤコジーン産駒で、父は2002年のスプリンターズS2着馬。ビリーヴの2着に泣いた12年前のリベンジを果たしたとも言える。 同様に、父ダイタクヘリオスが5、4着と2度敗北を喫したスプリンターズSでリベンジを果たしたのがダイタクヤマトである。同馬は父ダイタクヘリオス(1987年生)、母父テスコボーイ(1963年生)、母母父クリノハナ(1949年生)という血統。5代血統表にはダイオライトやトウルヌソルの名前も見られる古の血統だ。 ダイタクヤマトが活躍した2000年といえば、種牡馬リーディングでサンデーサイレンスやトニービン、ブライアンズタイムが火花を散らしていた時代。加えて短距離路線ではマル外が猛威を振るっており、実際、ダイタクヤマトが勝利した2000年のスプリンターズSでは2着アグネスワールド、3着ブラックホーク、4着ブロードアピール、5着マイネルラヴと2~5着をマル外の馬が占めた。 同年春の高松宮記念が7歳(現6歳)にしてGⅠ初挑戦となったダイタクヤマトだったが、結果は13番人気11着。その次走でオープン競走を勝利し、夏には函館スプリントSでブロードアピールらに先着する2着と好走していたものの、スプリンターズSでは16頭中16番人気に甘んじた。 その評価に反発するかのように先手を取ると、稍重の馬場に苦戦するライバルたちを尻目に力強い走りを披露。マル外の名馬たちの追撃を振り切って栄冠を手にした。その次走もスワンSを8番人気で勝利。その実力をファンに認めさせたのだった。 彼の戦績を振り返ると、江田照男騎手や中舘英二騎手、武豊騎手といった逃げの名手とのコンビで逃げ切り勝ちを収めている。人との縁にも恵まれた名馬だったと言えるだろう。今年のスプリンターズSも、人馬の絆を感じる走りに期待したい。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん