「こじはる」ブランドを買収した、30歳社長の思惑、yutori社長「細部に神を宿らせているブランド」
アパレルブランドを複数展開するyutoriは8月、タレントの小嶋陽菜さんが代表取締役を務めるheart relation社の株式を51%取得し、子会社化した。 heart relation社は女性向けアパレルブランド「Her lip to(ハーリップトゥ)」などを手がける。小嶋さんは同社のオーナー・創業者で、現在はCCO(チーフクリエーティブオフィサー)として商品監修などを行っている。 買収金額は17億円と、昨年12月に東証グロースに上場したyutoriにとっては過去最大規模のM&Aとなる。今回の買収の経緯や狙いについてyutoriの片石貴展社長(30)に聞いた。 【写真】yutoriの片石社長はファッションに強いこだわりを持つ若手経営者
■上場してから「大喜利」をしたかった ――heart relation社の前期売上高は29億円。yutori(前期売上高43億円)にとって、会社の規模でも金額でも過去最大の買収です。なぜheart relation社に目を付けたのですか。 僕の中では、大きなお金を伴う「大喜利」をしたかった。昨年にグロース市場へ上場し、次に買収するとしたら、大喜利みたいなものじゃないですか。上場の時期は審査の制約もあって大きな動きは取りづらいから。
買収先としてheart relation社は最高。みんなの想像をはるかに超える規模感で、お互いの戦略上の納得感もあった。こんなによいタイミングとチャンスはなかった。 狙い通り、反響はすごかった。ありとあらゆるところで拡散されて、シンプルに「こじはるすげぇ」という声が多かった。歴史上、アイドルから起業家に転身して、17億円のバイアウトをした人はいないんじゃないかな。 しかも、俺もこじはるさんも30代。若者同士がビッグディールをするのか、と。
――小嶋さんとはそもそも知り合いだったのでしょうか。 yutoriを創業したばかりの2018年に、共通の知り合いを通じてお会いしたのが最初で、こじはるさんは前のブランドをやっていた頃だった。 めちゃめちゃフラットな方で、成功体験にとらわれず、時代を見ながら新しいことを始めようとしていた点にフィール(共感)した。それからはお互い事業に集中していたが、SNSでの交流はずっと続いていた。 なので、創業時から今に至るまでのストーリーを近いところで見て、長い時間軸でお互いがどういうことをやっていたのかを把握していた。その意味で、今回の買収では互いに懸念はなく、かなりスムーズに進んだ。