75歳の医療費負担が3割になる!? 高齢社会対策大綱から見る家計運営の考え方。
出典:内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
これからは民間の医療保険に入ることが老後の安心につながるとはかぎらない
ここまでの流れを抑えたうえで、ファイナンシャル・プランナー(FP)の筆者がどう考えるかを示します。報道を受けて、「75歳になっても収入が多い場合、医療費の支払いも多くなる」などと、ざっくりとした印象を持つ方が出てくるでしょう。 これは間違いではありませんが、正しくもありません。重要なのは、所得区分の判定基準に適合するかどうかです。このため、「75歳になったら医療費の窓口負担が一律3割になる」と考えてしまうのは、早とちりといえます。 注意したいのは、このような報道を受けて、保険の代理店などから保険の加入や見直しを提案される場面です。理屈としては「75歳になっても医療費がかかるので、終身で保障の充実した医療保険に早いうちから入っておきましょう、見直ししておきましょう」ということが考えられます。 私たちが考えておきたいことは、まず、公的医療保険制度における「高額療養費制度」を活用することにより、医療費が多くかかったとしても、自己負担はそれほどかからない点です。民間の医療保険を検討する際は、支払う保険料と受け取る給付金の総額を相対比較し、高額療養費制度も含め、入りすぎには気をつけましょう。 また、75歳以上の「後期高齢期」というライフステージでは、医療だけでなく介護も想定する必要があります。公的保障としては介護保険制度がありますが、今後は保険料だけでなく、自己負担割合も引き上げられる可能性があります。 さらに、介護人材の不足により、予定されている介護サービスの提供が難しくなる恐れもあり、特に要介護状態になった場合の暮らしについて、十分検討しておく必要が出てくるでしょう。これを見越し、資産形成により老後資金を準備しておく必要があります。 つまり、今後求められる対策としては、保障については民間保険のウェイトを減らし、公的保障制度を基礎にしたうえで、何らかの資産形成方法を用い、老後資金の手当てをするという考え方です。 日本人は保険好きといわれますが、高齢社会・少子社会の下では、民間の保険は家計にとって負担感を生じさせやすい原因の一つと考えられます。この点を考慮し、総合的な家計運営を検討することが求められてくるでしょう。