【中京記念回顧】弱点克服のアルナシームが勝利 スピードの持続力武器に右の1800巧者へ
経験を糧に成長した走り
中京記念は上手に走れるよう競馬を教えてきた陣営と、横山典弘騎手の最後のひと押しが最高の結果を導いた。 逃げ宣言のセルバーグ、行かないと持ち味を出せないテーオーシリウスが内枠に入り、どちらも引かない構えをみせた。序盤から12.2-10.4-11.7-11.5-11.7と先頭はラップを落とさず、前半1000m通過57.5。アルナシームにとって走りやすいハイペースの縦長隊列になった。 さすがに飛ばしすぎで、後半800mは12.4-12.5-12.5-12.3と失速のステージへ。テーオーシリウス、セルバーグが早々に脱落し、自然な形で好位集団につけたアルナシームは勝負圏内へ。ハイペース特有のラスト200m大失速とはならず、最後を12.3でまとめられたのはアルナシームの秘めるポテンシャルの証であり、小倉大賞典などの経験があったからこそ。 母の母はドバイマジェスティで、叔父にはアルアイン、シャフリヤール兄弟がいる。父モーリスの成長はゆっくりで、5歳にして心身ともに充実期を迎える。血統が伝えるスピードの持続力を武器に、1800mのスペシャリストとして活躍するだろう。 ただし、左回りは最後のひと伸びができないという弱点がある。次走が毎日王冠だと不安を感じる。もちろん、左回りを克服する可能性は否定できないが、現状では不安が大きい。とはいえ右回りの1800mと好走範囲が狭くても、それもまたアルナシームの個性だ。適条件での活躍を楽しみにしたい。
粘り腰が戻ってきたエルトンバローズ
2着エピファニーも、小倉大賞典覇者のコース巧者。向正面で外目に持ち出したかったが、出すチャンスがなく、勝負所は内へ。最後も極力、最内を避けるようにコースを選ぶも一歩足りなかった。 アルナシームの背後からその外を狙ったようだが、先行2頭がバテ、馬群が早めに一団になり、外へ持ち出せなかった。クビ差は内を上手くすくえた分のようにもみえたが、馬場のいい外を攻めていたらもっと弾けたのではとも思わせる。 小倉巧者であり、上がりが速くならない競馬が合う。瞬発力は足りないが、持続力なら負けない。今後も舞台を選びそうだ。 3着エルトンバローズはアルナシームの目標になってしまい、競り落とされた。 自在な脚質が魅力のディープブリランテ産駒。同産駒は速い上がりだとしんどい馬が多いが、エルトンバローズは先行して速い上がりも粘れる。中距離で強気に攻めて活路を見出したいところ。ブリンカーを着用して本来の粘り腰が戻ってきた印象があり、展開を味方につけてひと暴れしてほしい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳