ベンチャー企業が「ミッション」への共感を重視するワケ 同じバスに乗せる人を「厳しく選別」
スキルより「ミッションへの共感」を優先する企業も
Aさんによると、非上場のスタートアップから東証グロース上場企業まで、ミッションやビジョンを非常に重視する会社は少なくないという。 「一番の理由は、メンバーの求心力を高めるためです。ベンチャーは急成長に向かって邁進するわけですが、『この会社は何のために作られたのか』『この会社は何を目指すのか』が明確になっていないと、何を頑張ればいいのか分からなくなります」 「また、よく言われるのが『ミッションやビジョンに共感していれば、多少辛いことがあっても耐えられる』ということ。ビジョン実現のため、という思いが強くあれば、やり切る粘り強さが出てくる、という考え方です」 もう一つの理由は「誰をバスに乗せるか」とともに「誰をバスから降ろすか」という基準になるから、というものだ。 「バスが西に向かおうとしているのに『いや東の方がいい』とか『そんなに早く行かなくてもいい』などと口を挟む人が乗客に混じっていると、目指すところに行けなくなります。なので、採用時には『ミッションやビジョンの意味を正しく理解しているか、強く共感しているか』という基準で人を選ぶ必要があるのです」 ミッションやビジョンについて「あまりピンとこない」「重要なのは仕事であって、理念みたいなものは興味ない」という反応を示す人は、仮に専門スキルが高かったり、過去に大きな業績を上げていたりしていても「不採用にするという方針を徹底する会社は多いです」。 また、いったん採用しても、会社の方針や価値観に合わない行動をやめない人に対して「バスから降りてもらう」理由としてもミッションやビジョンが使われるという。バスから降りてください、と言える理由をあらかじめ揃えておくということだ。 しかし、そのような「排除の論理」では多様な人材を採用できないのではないか。この疑問にAさんは「ベンチャーではビジョンの多様性は必要ない」という。 「ベンチャーにとって多様性は手段であって、目的ではありません。むしろミッションにさえ共感していれば、いろんなバックグラウンドを持つ人が採用されるわけですから、結果的に多様な人材が集まり、力を合わせることができるのではないでしょうか」