逮捕より支援を...相次ぐ“医療的ケア児”放置 脳性麻痺の子を育てる当事者「明日は我が身」親の孤独や苦悩とは
兵庫県で起きた2つの事件が波紋を広げている。ひとつ目は、去年1月に起きた30代の母親による保護責任者遺棄致死事件。寝たきりで気道確保のために、たんの吸引などが必要だった娘を1人で家に残し、17時間にわたり外出。結果として窒息死させたとして逮捕された。 【映像】「睡眠の取れない状態が毎日…」医療的ケア児をワンオペで育てるヤマグチさん もうひとつが、30代の母親による保護責任者遺棄致傷事件で、障害のある息子が“床ずれ”になっているのを放置して、重症化させたとして逮捕された。 ふたつの事件に共通するのは、“医療的ケア児”だ。たんの吸引や経管栄養など、生きるために日常的なケアを必要とする子どもたちのことを指すが、家族には大きな負担がかかるのが現状だ。『ABEMA Prime』では、医療的ケア児と親のサポートについて考えた。
■医療ケア児の長男3歳を持つ、ヤマグチさんの生活
脳性麻痺の長男(3歳)を1人で育てているヤマグチさん(仮名)は、一連の事件について「明日は我が身だと思った」という。「仕事をやめざるを得ず、収入が減り、キャリアも途絶えるが、『母親なら当然』という風潮がある。自治体の障害福祉課の職員にも理解してもらえず、支援依頼が却下されることも多々ある。助けを借りないといけないが、うまくいかない事情がある」と明かす。 ヤマグチさんの長男に必要なケアは、常時の酸素状態チェックで、酸素吸入の機械を常時つけておく必要性がある。たん吸引は調子が悪い時は15分に1度、睡眠時も1時間に1度行うため、ヤマグチさんはまとまった睡眠が取れない状態が続く毎日を送っている。 長男には酸素モニターを付け、24時間モニタリングをしている。「酸素の値が下がれば、吸入や吸引をする。医療的ケア児でも動ける子はいるが、息子は“重症心身障害児”と呼ばれる枠で、身体を自分で動かせず、知的障害も重度だ。医療的ケア以外にも、食事などの動作ひとつ一つに介助がいる」と説明。 酸素モニターを付けたことで、「呼吸ができなくなったら教えてくれる安心感」ができたが、それでも「ケアが必要で休めず、いつ何が起こるかわからないとヒヤヒヤする」という。「浅い睡眠になって、モニターのアラーム音がずっと聞こえている状況だ」。 ヤマグチさんは、かつて大学病院の看護師と大学教員をしていたが、現在は会社員(フルリモート)だ。長男は2021年、重症新生児仮死で生まれ、現在も脳性麻痺の状態だが、食事は上手ではないが自分でできる。 夫とは「息子が1歳になる前から別居し、今は離婚調停中だ」といい、「最初は夫と分担していたが、息子の医療的ケアが本格的に必要になったのが去年で、そこからは全部自分一人で対応している」と述べた。