【試乗】往年のファクトリーマシンを彷彿させる「XSR900 GP」は最新機能満載。扱いやすく、ツーリングも楽しめる!
特性の違いを体感できるYRCの走行モード
XSR900 GPは市街地でも乗りやすかったが、そうした乗りやすさに大きく貢献しているのがYRCの走行モードだ。前述のようにSTREET/SPORT/RAINの3パターンがあらかじめ用意されていて、「幅広い環境と路面をカバーし、市街地走行に適したモード」として設定されているのがSTREETだ。2000rpmくらいからトルクが立ち上がり、2500rpmで交通の流れに乗って走行でき、3000rpm以上はパワフルな加速力を発揮する。QSSのシフトチェンジもスムーズで、前後サスもフラットな乗り心地を提供してくれるので、マシン挙動がギクシャクしない。スロットルレスポンスはシャープすぎず、適度なマイルドさがあって扱いやすく、疲れにくい乗り味になっていた。 SPORTは「エンジンレスポンスが高まりワインディングやサーキットに適したモード」とされていて、ハイスロになったようにレスポンスがシャープになる。2500rpmから鋭い加速力を発揮し、中高回転まで回さなくても市街地では速すぎるほどだ。トルク変動も大きくなり、マシン挙動もギクシャクしがちだが、888ccのトルクとパワーを堪能できるモードだ。 RAINは「出力特性がマイルドになり、雨天など悪化した路面状況に適したモード」で、SPORTとは逆にスロットルレスポンスも穏やかで、全域でマイルドなトルク特性となる。加速も穏やかで、マシン挙動もフラットなので、パワーに振り回されない扱いやすさがある。雨天や疲労時に、ライダーをサポートしてくれるだろう。 個人的にはSPORTの加速力にレーサーレプリカらしさを感じた。ワインディングや、サーキットでのスポーツ走行で操る楽しさを得られるだろう。ただハンドリングはヒラヒラというよりしっとりした操作感があって、車体も安定志向に感じた。そうしたマシン挙動にはSTREETの少しマイルドな吹け上がりのほうがバランスがよく感じられ、街乗り、タンデム、ツーリングでオールマイティな「乗りやすさ」になっていると思った。往年のファクトリーマシンの再来としてスポーティな走りを楽しむのはもちろん、CP3の扱いやすさを幅広い状況で体感できるスポーツツアラーとしても楽しめる。スポーツ性能に特化せず、ファクトリーマシンのスタイルを幅広いライダー層で楽しめるように仕上げているのが、XSR900 GPだと思った。
2024年型ヤマハXSR900 GP主要諸元
・全長×全幅×全高:2160×690×1180mm ・ホイールベース:1500mm ・車重:200kg ・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列3気筒888cc ・最高出力:88kW(120PS)/10000rpm ・最大トルク:93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm ・燃料タンク容量:14L ・変速機:6速リターン ・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=シングルディスク ・タイヤ:F=120/70-17、R=180/55-17 ・価格:143万円
小川浩康