“1ドル=240円時代”米ツアー取材の過酷実態とは!? 昭和のゴルフ記者は“命の危険”を冒して岡本綾子を追った【小川朗 ゴルフ現場主義】
「失われた30年」と「日本のアメリカ化」
しかし、そうはなっていません。先進国と日本の賃金格差は広がるばかりでした。その理由を伊藤さんはこう説明してくれました。 「大きな理由は日本のアメリカ化ということです。というのは、外国人持ち株比率はもう、日本の場合50%超えてますから。企業は言ってみれば外国に乗っとられてるようなもんなんですよ。そうすると、外国人の圧力ってのは、還元なんかしないってことで、言ってみれば『失われた30年』は演出された30年で、日本のアメリカ化をよく表していると思います」 民間銀行貸し出しが増えていないという指摘もありました。「貸しはがし」や貸し渋りをし続けた銀行に嫌気がさして、企業が内部留保を増やし続け、設備投資をするにも銀行から借りる必要がなくなったという側面もあるでしょう。 そうした状況下、伊藤氏は明治時代の“松方デフレ”を例に挙げました。 「日本は長期のデフレを経て令和に入ってからはインフレに転じていますが、明治時代にも“松方デフレ”と呼ばれる長期の景気停滞がありました。この松方デフレっていうのは当時の大蔵大臣だった松方正義による財政政策を通して引き起こされたデフレなんですよ。で、なんでこれが起こったかというと、当時の明治政府は戊申戦争や西南戦争などの膨大な戦費をまかなうために、金とか銀に交換できない紙幣である不換紙幣を大量に発行しました。それが原因で通貨価値、貨幣価値が下落し、インフレが発生して物価が上昇しました」 これを是正するために松方が仕掛けた“官製デフレ”だったというわけです。 「今のインフレは単純にこれ(松方が施策を打つ前の状況)です。要するに、アベノミクスでね。10年間にわたって大量異次元金融緩和政策をやって、マネーを刷りまくったら、そりゃあ、通貨価値、貨幣価値が下落してインフレが発生して物価が急上昇するでしょう。あんなアベノミクスみたいな異次元金融緩和政策のことを10年間もやったら当然こうなります」 「1980年代に共和党の大統領だったレーガン氏が共和党の大統領だったからホワイトハウスがドル安に誘導したかったというのはよく分かります。従って今回、トランプ氏が次期大統領になれば一気に円高ドル安になる可能性はあるとは思っています。そうすると、現在交渉されている日本製鉄によるUSスチールの買収も難しいと思います」 企業だけが儲かり、消費者が苦しめられ続けたのがこの30年。昭和と令和のデフレが異質なものであるものの、日本は相変わらずアメリカから強い影響を受け続けています。 取材・文/小川朗 日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)