少子化、女子中高と家政学離れ…「伝統女子校」が“生き残る”ための秘策とは?
女子中高サバイバル、次の一手は
――こちらの付属校も最近はとても元気になり、説明会などの参加者も増えています。どこが変わったのでしょう。 吉武 本学院の高等学校・中学校は付属校ではなく、併設校という位置付けなのですが、近年は低迷が続いていました。ここ3~4年の変化についてご評価いただき、とてもうれしく思います。 休日に開催した学校説明会の直後に、参加された保護者の皆さんのアンケート結果などが送られてきますが、満足度がとても高く、本校の良さを伝える教職員の努力が少しずつ実ってきたのかなと感じています。昨年1月には持続可能な社会構築のための教育の普及を目的とした「ESD大賞」で、最優秀の文部科学大臣賞を受賞することができました。SDGsをテーマにした中1から高2までの探究学習が評価されました。 また、この夏に松山市で開催される俳句甲子園に東京都代表で出場します。もともと私立大学への推薦枠も多く、魅力さえ上手く伝えることができればと考えていたのですが、危機感をバネにさまざまな工夫が見られるようになったことが最近の成果につながっているようです。 ――中高の生き残り戦略は、どのようにお考えですか。 吉武 成果が現れてきたとはいえ、生徒募集という点では満足できるレベルにはなく、急速な少子化も考えると生き残り戦略は不可欠です。ただ、現状の枠組みの中での努力や改善にとどまっており、戦略と呼べるものを構想できていないというのが正直なところです。 生徒と教師の距離が近く、生徒に寄り添ったきめ細やかな教育を行っていること、生徒はみな素直で学校の雰囲気も良いことなど、間近で見ていて誇ることはたくさんあるのですが、それだけでは生き残れません。大学に連携・協力が求められているのと同様に、中高についても連携・協力を含めた改革が必要だと考えています。 ――どのような相手が考えられますか。 吉武 具体的なことはこれからですが、付属校、系列校、提携校を持ちたいというニーズは多くの大学にあります。本校の理念やこれまで培ってきたリソースを生かしながら、持続・発展できる道筋について検討していきたいと考えています。その際に大切にしたいことは、生徒の学びと教職員の働きがいにとって何がベストかということと、どうすれば社会に支持され続けるかという視点です。 ――最後に、日本の大学のこれからについて、海外の大学と比べてお話しください。 吉武 国立大学が法人化された2004年頃から、国公私立ともに改革を迫る圧力が増し、近年その傾向がさらに顕著になってきたと感じています。その背景の一つに、日本の大学が海外とりわけ欧米の大学に比べて遅れている、あるいは劣っているとの認識があるのかもしれませんが、一概にそうとはいえません。 ゼミナールは日本が誇る教育システムの一つですし、ゼミを通した学生と教員の近さなどは日本の大学の強みです。改革圧力の結果という面もありますが、教育の質を高めるための活動が活発になり、質保証の仕組みも整いつつあります。 その一方で政策主導の改革がもたらす弊害も数多く見られるようになりました。最大の問題は現場の教職員から物理的・精神的ゆとりが失われつつあることです。800近い大学を一律に論じがちな点も気になります。政策を起点にするのではなく、一つ一つの大学が、目の前の学生、あるいは高校や社会の動向を直視し、そこから将来像や戦略を構想することが大事なのではないかと考えています。
ダイヤモンド社教育情報,森上教育研究所