少子化、女子中高と家政学離れ…「伝統女子校」が“生き残る”ための秘策とは?
100年前から三番町(東京都千代田区)にキャンパスを構える東京家政学院。関東大震災の年、大江スミが創設した家政研究所から始まる学び舎は、現在、少子化と女子大離れの大波に襲われている。大学改革の第一人者である吉武博通理事長が切り出した伝統女子校のサバイバル策はいかに。(構成/ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子) 吉武博通(よしたけ・ひろみち) 学校法人東京家政学院理事長 の柱」で家政学の展望を開筑波大学名誉教授。1954年大分生まれ。九州大学法学部卒。新日本製鐵を経て、2003年筑波大学教授(社会工学系)。06年同大学理事・副学長、09年大学研究センター長。その後、東京都公立大学法人理事、情報・システム研究機構監事を経て、20年より現職。
女子大と家政学の未来
――理事長は、新日本製鐵では組織改革を、筑波大では大学改革を行った第一人者ですね。 吉武 民間企業で25年間、筑波大の副学長や東京都立大の理事として20年余、経営改革や教育研究に携わってきました。女子高等教育の意義を考え始めたのは、お茶の水女子大で非常勤の役員を8年5カ月務めてからです。日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位(2024年)と低いですし、リーダーシップ養成機関として、女子高等教育機関はとても大事だと思います。 一方で、全般的に共学志向が進む中、女子大、なにより家政学系の志願者数の減り方が大きい。このまま女子大で家政系のまま生き残るというのは、現実的には厳しいだろうと判断しました。 ――多くの女子大は家政学を中心に据えてきました。東京家政学院は校名に「家政」が入る女子大です。それを共学化することになったわけですね。 吉武 小中高で家庭科は不要な学問なのかといえば、そんなことはありません。小学5年から高校まですべての家庭科の教科書を読んでみました。家政学や家庭科は、生きる力の学問です。これを守らなければいけない。日本の家政学の礎を築いた大江スミが創立した学校として100年。私たちの歴史的使命として、家政学を守りたい。ジェンダーの差をなくして、男女幅広く家政学の門戸を開くため、大学を共学化することにしました。 家政学は大きく五つの分野に分かれます。衣食住と児童教育、そして家庭経営です。従来の家政学を生活科学と言い換える大学もお茶の水女子大のように出てきています。うちの場合は大学名に「家政」と入っていますが、学部名には入っていません。生活者の視点であらゆるものを科学的に考えていくことが家政学であり、名称にはこだわっていません。 ――こちらの学園にいらしてからどのくらいがたちますか。 吉武 理事長としてはもうすぐ4年になります。 ――中から見ていて、改善や改革が必要なことは目に付きますか。 吉武 良い点もたくさんあるのですが、改善・改革のテーマはいくつもあります。私は国公私立のさまざまな大学の経営や評価に関わり、全国の100を超える大学を訪ねました。大きな大学なら、ジョブローテーションを通じた職員の人材育成システムがあります。ところが規模の小さい大学は職員が数十人で、ローテーションや独自の研修などでの育成が難しい。ですから、教育・研究の充実を支える職員の育成が大事な要素となります。