少子化、女子中高と家政学離れ…「伝統女子校」が“生き残る”ための秘策とは?
日本の大学の生き残りに必要なこと
――これも皆、追手門学院大の経験を元にしているわけですか。 吉武 このプログラムを追手門学院大で開発した元副学長の福島一政氏と元アサーティブ課長の志村知美氏に、それぞれ常務理事と学長補佐(アドミッション・オフィサー)に就任してもらい、関東では私たちが先駆的に実施することにしました。 ――なるほど。関西の方が少子化は少し早く訪れましたから、大学も危機感があったのでしょう。 吉武 いろいろな改革も関西の方が進んでいる印象があります。私が大学経営改革に関する連載を持っている「カレッジマネジメント」(リクルート進学総研)で、全国理事長調査を実施しました。首都圏・関西圏・地方と分けてみたところ、関西圏の理事長が一番強い危機感を持っていました。18歳人口の減少や少子化は地方の方が顕著ですが、関西は大学数も多く、競争が厳しいことが背景にあると思います。 ――大学全体を見たときに、これから必要なことは何でしょうか。 吉武 800近くまで増えた大学のキャパシティが、18歳人口に代表される需要の減少に対して過大となりつつあることは明らかです。今後急速に撤退や再編が進むことは避けられません。 これまで国公私立という設置形態の異なるさまざまな大学に、経営や評価を通じて関わってみて、大学の規模や選抜性の高低などに関係なく、どの大学にも持ち味があること、頑張っている学生や教職員がいることを肌で感じてきました。そんな経験から、供給力の削減が高等教育の質の低下につながることは絶対に避けなければならないと思っています。 教育の質が高まる方向に大学間で健全な競争が行われていくためには、足りない部分をどのように補っていくか。大学側はすべてを自前でやろうとせず、地域の力や産業界など外の力を使うことです。大学系列のアウトソーシング会社が増えています。大学の業務構造を改善することによって、しっかりした教育ができるようにすることが大事だと思います。 ――企業での経験から、大学の経営ではどういったところが一番改善した方がいいと思われますか。 吉武 まず、企業と大学は根本的に組織の成り立ちも違いますし、目的も異なります。企業の経験を持った人が大学の理事などを務める例も増えています。一方で、「企業の論理を持ち込まないでくれ」という大学の人もいます。 どちらの言い方にも少し違和感があります。大学が大事にしなければいけないのは、教員については自分の興味・関心に基づいて自由に研究することです。大学は、トップダウンで経営するような組織ではないでしょう。 一方で、事務局や学校法人はしっかり経営され、管理職はじめ人材を計画的に育成していかないと、大学の持続可能性は保証されません。この点では、企業に学ぶ点が数多くあります。デジタル技術を活用した業務改革やアウトソーシングなどももっと進めていく必要があります。また、大学では民主的プロセスを重視しますが、多数決から優れた戦略は生まれません。 ――そういう意味では、改善することはまだまだいっぱいありますね。最初にこちらの学園で着手したことは何でしたか。 吉武 まず、「理事長を偉くしないように」とお願いしました。組織図の一番上に来るのは学生や生徒であり、次に来るのが彼らと日々接している教員や職員。その下に管理系職員や理事がいて、一番下に理事長がいる。教職員には学生・生徒に向き合い、正しいと信じることを主体的に提案し、取り組んでほしいと期待しています。私の仕事はその「場づくり」です。 そして教職員は、相互にリスペクトしてほしい。それが教育機関の基本だと、何かを始めるときはできるだけ多くの教職員に、じかに語りかけました。 ――二つの点で意識改革を促したわけですね。