【F1分析】1周で10秒も速かった角田裕毅、RB”ウエット投入”絶好の判断。首位も射程圏だったのにSCで夢潰える
■角田、急速に追い上げる……しかし
当時の上位勢の差の推移も、グラフで見てみよう。VSCが宣言された時、角田は首位ラッセルから14秒の遅れだった。しかし上位2台と角田がピットストップをした後、角田はステイアウトしたオコンから28.249秒後方でコースに復帰した。 このオコンとの差はセクター2を通過したところで25.254秒となり、セクター2では22.367秒、翌30周目のセクター1で18.174秒まで一気に縮まった。わずか1周で10秒を縮めたわけだ。つまりあと2周で追いつくという計算だ。追いつき、オーバーテイクした後は、1周につき10秒差を開いていったはずである。 そう考えると、あと4周もあればタイヤ交換をしても首位で戻れるだけのセーフティリードを築くことができたはず……つまりコース上の水の量が減り、ふたたびインターミディエイト有利なコンディションとなったとしても、タイヤを履き替えて首位で戻れるだけのアドバンテージを築くことができたはずだ。つまり、優勝の2文字も決して夢ではなかった。 しかし、雨が強すぎるとしてセーフティカーが出動。その後コラピントのクラッシュにより赤旗中断となったことで、まだタイヤを替えていなかったアルピーヌの2台とフェルスタッペンに幸運が転がり込んだ。 レースはどんなことでも起こりうる。今回のように荒れたコンディションであればなおさらだ。しかし今回のレースでRBが採ったウエットタイヤを履くという判断は、まさに完璧な選択だったと言えるだろう。ただ、運が向かなかっただけ……。 それを考えれば、角田やチームの首脳陣が悔しがるのは、当然と言えば当然だろう。 今季はあと3戦。今回以上の手に汗握る走りを、角田にはまた見せてほしい。
田中健一