ブラウン管テレビ、20年ものの冷蔵庫。<せどらー>との交渉で処分費が8万円に収まった理由とは?そして巨大な仏壇の使い道はまさかの…
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」によると、2023年の空き家数は過去最多の900万戸だったそう。そのようななか、小説家の高殿円さんは、祖父と叔父が亡くなってから長年放置されていた、築75年・再建築不可の実家に頭を悩ませました。高殿さんは、大量の残置物を片付けるために<ガレージセール>を実施することにしたそうで――。今回は、高殿さんの著書『私の実家が売れません!』より、一部抜粋・再編集してお届けします。 【書影】話題の「実家じまい問題」に、人気作家が挑んだリアルな実体験。高殿円『私の実家が売れません!』 * * * * * * * ◆兄ちゃんの物色 ガレージセールにやってきたせどらー(=商品転売によって利益を得ている人)の兄ちゃんこと「Fさん」は、昭和レトロな食器をすべて確保すると、すぐにほかのものを物色しはじめた。 「金属製のものはすべて引き取ります」と、大工道具の中に大量に残されていたビス類をはじめとして、さびさびのスチール棚などにキープのガムテを張り始めた。 兄ちゃんはあきらかにラタン家具も狙っていたようだったが、一歩先に引き取りを決めていた隣町に引っ越してきたばかりの姉弟が勝った。 姉弟はプロのせどらーと違って一般人なので、一度に家具を全部持って帰れない。 しかし私たちは日が暮れればガレージセールを閉店して家に帰る。 二人が知り合いにトラックを借りてもその日にこちらに来られるかどうかは不明だ。
◆ある計画 「一週間後なら、なんとか」 私はグーグルに今週の天気予報を聞いた。 急いでこの話をまとめるために、ある計画を思いついたのだ。 今週一週間は晴れ予報なので、台風が来ないうちに片づけを終える必要があった。 食器でいっぱいになったプラケースを運び出し、戻ってきたせどらーの兄ちゃんに交渉することにする。 「Fさん、たしか、給湯器とエアコンを持って帰られるんでしたよね」 「はい。でも今日は思ったより荷物が多いので、できれば別日にも取りに来たいのですが」 「わかりました。では、もしFさんがそういうお仕事を請けておられたら、お願いしたいことがあるのですが」 私は、エアコンと給湯器その他を持って帰る日にこちらに家を開けにくる代わりに、Fさんに、二つのことをお願いした。 「処分費がかかる冷蔵庫、洗濯機、仏壇の処分と、この山のようなゴミ袋をゴミ処理場までトラックを出してもらいたいんです」
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