恨まれたくない! 父の遺産「自宅」売却金を兄弟3人で分割することになったが…禍根を残さないための対策は?【弁護士が解説】
解説
1. 換価分割または代償分割の結果としての金銭支払が明記してあるかを確認する。換価分割の場合、リスクを踏まえて相続登記名義を検討する (1)換価分割と代償分割 遺産分割において、相続した不動産を売却して、売却代金を相続人間で分ける手法としては、換価分割と代償分割の二つの方法が考えられます。 換価分割は、相続人全員で不動産を売却し、売却代金から諸費用を控除した残金を相続人間で分配する方法であり、代償分割は、特定の相続人が不動産を単独で取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。 代償分割の手法をとる場合は、当該不動産を売却しない場合が多いと思われますが、比較的早い段階で当該不動産を売却して売却代金を原資に代償金を支払う場合には、換価分割とほぼ同じ状況となります。 なお、換価分割の場合、不動産を一旦相続人全員の共有名義で登記することが多いと思いますが、相続人の一部が海外にいるなどの事情で共有名義にすると売却が困難となる場合には、換価分割の実行のために、便宜的に、特定の相続人の単独名義に相続登記をした上で(国税庁質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」でも、換価の都合上、共同相続人のうち一人の名義に相続登記ができることを前提に、贈与税がかからない旨を明記しています。後述。)、その相続人のみで売却活動をすることもできるとされています。
登記面・税務面において想定される「2つのリスク」
(2)贈与と認定されないようにする 遺産分割協議書において、長男から弟たちへの送金が、換価分割または代償分割に基づく送金であることが明記されていないと、長男から弟たちへの現金の贈与と認定され、弟たちに贈与税の負担が生じる可能性があるので注意が必要です。 なお、換価分割を選択し、長男の単独名義で一旦相続登記を入れる場合も、国税庁の質疑応答事例では「共同相続人のうちの一人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。」とされており(国税庁質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」)、長男単独名義の登記が換価分割を実行するための手段であることが遺産分割協議書に明記されていれば、長男から弟たちへの現金の送金について、原則として贈与税は課税されないと考えられます。 (3)換価分割のために長男単独名義にすることの妥当性 換価分割のために長男単独名義にするメリットは、換価手続を簡便、機動的に行うことができるという点に尽きますが、共有名義になっていたとしても、次男と三男から委任状を取得することで、実質的に長男一人で換価手続を進めることができるため、手続面でそこまで大きな差はないように思われます。 他方、長男の単独名義の相続登記がなされると、次男と三男にとっては、自分たちの意見が反映されないまま不動産を売却されてしまうリスクがありますし、長男にとっては、自身が単独での固定資産税・都市計画税の納税義務者となり、また、不動産に起因して第三者に損害が発生した場合には自身が損害賠償責任を負うことになるというリスクがあります。 また、売却までに長期を要した場合(もはや便宜的に単独名義にしたとは評価できないような場合)や換価代金と費用の配分が不適当な場合には贈与税が発生する可能性もあるため、長男の単独名義にすることが特別要請されているケースでなければ、相続人全員の共有登記を入れた上で換価分割をする方が、リスクが少ないと思われます。 長男の単独名義にするか否かは、登記面と税務面のリスクを事前によく確認した上で、慎重に判断する必要があります。
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