経産省を休職してパリの名門ビジネススクールで学び、名古屋スズサンへ 「日本の職人技を海外市場で横展開する」未来を描く 井上彩花
ラグジュアリーが「普通の人の特別」になる経緯を体系的に学び、いろんな気づきや関心が生まれた。職人技の価値やコミュニケーションの重要性、スタッフ教育の重要性、オンラインでのマーケティングコミュニケーション、顧客情報の管理など、ビジネススクールで学ぶ要素を一つのテーマに沿って学ぶことができた。
WWD:その中で特に印象的だったことは?
井上:「エルメス(HERMES)」のナンバー2でエセックの卒業生であるギヨーム・ド・セインヌ(Guillaume de Seynes)=エルメス・エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント・マニファクチャリング部門兼エクイティ投資に「クラフトマンシップとクリエイティビティ、どちらもラグジュアリーブランドにとって大切な要素。この二つの重要性やバランスはラグジュアリーにとって普遍/不変か」と投げかけた時の答えで、「『エルメス』のコアはクラフトマンシップとクリエイティビティ(職人とデザイナー)の折衷をすること」と言い切っていたこと。何がラグジュアリーなのかや、顧客が求めるものが変わっても、クラフトマンシップとクリエイティビティの折衷から生まれる価値が大切であることは変わらないと。クラフトマンシップの評価は多面的に強調していた。
WWD:帰国後は経産省でのキャリアではなく、スズサンを選んだ。スズサンだった理由は?
井上:クールジャパンに取り組んだときのアイデアや意識が軸にあったからこそ、パリでのいろんな経験を自分なりにかみ砕くことができ、人と話す機会や出会いを作ることができた。この領域で役に立ちたいと考えた。ビジネスサイドでできることの解像度を高めることができれば将来、いい形で官と民の架け橋のようになれるのではないか。そのための具体的な事業の経験をしたいと考えた。
「スズサン(SUZUSAN)」はフランスで学んだラグジュアリーブランドの考え方と合致するところがありつつも、ラグジュアリーという言葉では説明できない日本のモノ作りの価値を兼ね備えたブランドであると思った。具体的には4つポイントがある。