経産省を休職してパリの名門ビジネススクールで学び、名古屋スズサンへ 「日本の職人技を海外市場で横展開する」未来を描く 井上彩花
経済産業省ファッション政策室を休職してパリの名門ビジネススクールに留学、帰国後は経産省に戻らずに有松鳴海絞りで知られるスズサンへ――ユニークなキャリアパスで日本の職人技の価値を創造し、世界に売り出そうと試みる井上彩花。新しい発想とそれを実現しようとする姿勢はイノベーターともいえるだろう。そんな彼女にパリで学び得た気づきや日本の産地の可能性とこれから実践していきたいことについて話を聞いた。 【画像】経産省を休職してパリの名門ビジネススクールで学び、名古屋スズサンへ 「日本の職人技を海外市場で横展開する」未来を描く 井上彩花
官と民の架け橋になることを目指して
WWD:経産省を休職してパリに留学した理由は?
井上彩花・スズサン営業、各種プロジェクト担当(以下、井上):経産省時代はクールジャパン政策課のチームにいて、その考え方のベースに官民が連携して海外に日本のいいものを高く売っていくことがあった。日本の人口減少や市場縮小、内需に偏重していた状況下で、海外市場で高い金額に納得して買ってもらえるかを検討するチームでキャリアを積むことができた。その中で「ファッション未来研究会」を担当させていただき、さまざまな主体の取り組みを知りその熱量を感じ、私も何かできないかと考え始めた。そして選んだのがパリのエセックビジネススクール(ESSEC business school)への留学だった。エセックは28~29年前、世界初のラグジュアリーブランドに特化したビジネススクール(大学院)のコースを設立したところ。クールジャパンが取り組んでいたことをすでに成功させたフランスのビジネススクールで何を学べるのかを経験したいと思った。
WWD:ビジネススクールやインターンをしたことで得た気づきは?
井上:学校は座学と約30のフランスブランドの本社や工房の訪問やインターン含めた実地研修があり、ブランドで働くマネジャーやディレクタークラスと話す機会も多く、ビジネスに入り込んで学べるのでさまざまな気づきが得られた。まず学ぶのはラグジュアリーの考え方について。「ティファニー(TIFFANY & CO.)」のハイジュエリーと木や動物の歯で作られた古代のネックレスを見せられて、両方ラグジュアリーだと学ぶ。そこからラグジュアリービジネスの成立過程、例えば“田舎の国”だったフランスがラグジュアリーブランドのイメージを作りだした経緯を学んだ。