『ゴールデンカムイ』から見る、アイヌ民族の衣服文化の世界
アシㇼパの服の文様は樺太アイヌのもの
ーアシㇼパは子どもですが、実際のアイヌの子どももアットゥㇱを着ていたのでしょうか? 江戸時代の絵を見ると、幼い子どもが裸で過ごす様子が多く描かれています。ただ、もちろん寒いときはアットゥㇱなどを着ていたと思います。 その場合は、大人の古着を小さくしたり、あまった布を仕立てたりして、子どもむけに作り変えていたのではないでしょうか。 ー冬の寒さが厳しい北海道ですが、アットゥㇱは寒くないのでしょうか? アットゥㇱは、繊維の間に空気を含むので暖かかったようです。 大正生まれの方で「オヒョウ樹皮の靴下は冬でも暖かかった」と語る方にもお会いしたことがあります。 ほかに「アットゥㇱの内側に毛皮を付けて暖かくする」という工夫もあったようですね。 ーアシㇼパの金塊探しの旅は2年ほどでした。その間、アシㇼパはずっと同じ服を着ていますが、実際にアットゥㇱはどれくらい持つのでしょうか? アットゥㇱを2年間にわたって毎日着用し続けることは、実際にはありえないと考えます。 アットゥㇱは非常に耐久性の高い衣服として知られていますが、肘や袖口、お尻のあたりなどは日常的な使用で摩耗しやすい箇所でした。 補修を重ねながら丁寧に着用することで、長期の使用も可能であったと推測されます。
ーアシㇼパは自分の服をアットゥㇱだと思っていますが、正確には「テタラペ」という樺太アイヌの服だったことが物語の後半でわかります。
アシㇼパの服の文様は、北海道アイヌではなく樺太アイヌのものに似ています。 樺太のテタラペは、北海道のアットゥㇱより文様が複雑で、刺繍の曲線や糸の色なども違うことが多いです。 ー柄のほかに、テタラペとアットゥㇱに違いはありますか? テタラペは、イラクサという草から作られます。細い繊維がとれるのでアットゥㇱよりやわらかく、雪にさらすことできれいな白色になります。 アットゥㇱの方が丈夫ですが、テタラペの方が着心地がいいと思いますよ。