横浜市長の権力と魅力 なぜ多彩な顔触れが立候補するのか
「政令市」は何が特別なのか?
現在、札幌から熊本まで日本列島を縦断する形で20の政令市がある。法律上は50万人以上が指定要件となっているが、当初5大市(大阪、名古屋、京都、横浜、神戸)でスタートした時は人口100万人以上が実質の指定要件とされた。その後「将来100万人見込み」と変わり、さらに平成の合併促進策として70万人まで要件は下げられ、20市まで増えている。もとより現在20市の約半分は100万人以下であり、200万人を超える市は横浜、大阪、名古屋の3市のみ。その中でも横浜市は378万人と飛びぬけている。
政令市は、ざっくり言うと、府県行政の8割近くが市に移されている。「市+8割府県」の役所とみてよい。一般市と違い「大都市の特例」として主に次の4項目の特例からなる。 (1)事務配分上の特例 道府県が担当する社会福祉、保健医療、都市計画など市民生活に関連する業務の多くが政令市に移管されている。保健所や児童相談所、公立小中学の教職員の任免、定数・給与決定、学級編成、1級河川、2級河川、指定区域外の国道の管理などがそれだ。 (2)行政関与の特例 県の関与が少ないのが特徴で、例えば社会福祉事業の改善命令、土地区画整理事業計画の許可等の事務については、県知事の許可、認可、承認等の関与を要しない。県知事に代えて直接主務大臣の関与を受ける仕組みとなっている。 (3)行政組織上の特例 規模の大きい大都市の運営に配慮し、条例で区域を分け、行政区を設置できる(現在、横浜市には18の行政区がある)。その他、教育委員会や人事委員会の設置、職員共済組合の設置なども認められている。 (4)財政上の特例 大規模償却資産に係る固定資産税の課税制限の適用除外や道路財源の地方道路譲与税、石油ガス譲与税等の措置、宝くじの発行などが認められている。 もっとも、警察の権限、精神科病院の設置、保育士や介護支援専門員の登録、私立学校・高校の設置認可、重要文化財の管理監督などは県の担当のまま。また、県から市に移された事務にふさわしい税源措置が十分行われているかと言えば、財布は県が握ったままで、財源をめぐる市側の不満は強い。