「夜行列車」復活のカギは? 資金調達・車両確保・運行体制、誰が・どこで・どう実現するのか?
宿泊費高騰時代の移動手段
夜行列車は、かつて多くの人に利用されていた移動手段だ。寝台車を使った快適な移動や、昼間の時間を有効に使える利点があるものの、新幹線や高速バス、格安航空の普及でその存在感が薄れてきた。 【画像】どの部屋にするか迷っちゃう! これが「サンライズの車内」です!画像を見る(計14枚) 本連載「夜行列車現実論」では、感傷やノスタルジーを排して、経済的な合理性や社会的課題をもとに夜行列車の可能性を考える。収益性や効率化を復活のカギとして探り、未来のモビリティの選択肢として夜行列車がどう再び輝けるかを考えていく。 ※ ※ ※ 最近、夜行列車の復活が再び注目を集めている。コロナ禍が収束し、インバウンド需要が回復するなかで、出張時の宿泊費高騰が問題になっている。特に、出張の増加にともない、宿泊費が予算の上限を超え、自己負担が増えるケースが増えている。 こうした背景のなか、時間とコストを効率的に活用できる夜行列車が、新たな選択肢として浮上している。フリーランスの増加など、働き方の多様化が進む現在、夜行列車は移動時間を有効に活用できる魅力的な交通手段として注目されている。 筆者(北條慶太、交通経済ライター)は、連載2回目となる前回の記事「「夜行急行」が鉄道観光を復活させる? 「寝台2両+座席主体」という新提案、“夜行専用会社”があったら面白くないだろうか?」(2024年11月25日配信)で、次の点について言及した。 ・現在運行されている寝台列車は、需要に応じて柔軟に運行されることが期待されている。寝台列車は夜行バスに比べて快適で、ビジネス利用にも適している。 ・これらの列車復活には運行管理やコスト面での課題があるが、ビジネスユーザーにとってのメリットは大きいため、長期的な鉄道維持戦略として重要な選択肢と考えられている。 ・また、「JR夜行」という専用会社を設立する提案もあり、これにより夜行列車の運行が効率的に管理され、観光地へのアクセス向上やインバウンド需要の取り込みが可能となる。 ・一方で、夜行列車は新幹線や高速バスに比べて時間やコストの面で「中途半端な存在」とされ、運行管理や収益性の確保が難しいとの意見もある。さらに、需要の不確実性や環境負荷の問題も考慮しなければならない。 ・それでも、柔軟な運行形態を採用することで、収益を安定させ、インバウンド需要やビジネスイベントに対応した運行が可能になる。 夜行列車が本格的に復活すれば、長距離移動の選択肢が広がり、観光需要の活性化や交通手段の多様化が期待される。しかし、実現には次のような課題が存在する。 ・運行資金の調達 ・車両の確保 ・運行主体の確立 ・路線の選定 ・安全性の確保 ・競合との差別化 本稿では、夜行列車復活のメリットと課題について、経済面や運行実務の観点から詳細に検討する。