「夜行列車」復活のカギは? 資金調達・車両確保・運行体制、誰が・どこで・どう実現するのか?
筆者の意見
夜行列車の運行再開は、ビジネスや観光、インバウンド需要を支える新たな移動手段として大きな可能性を秘めている。しかし、その実現には多くの課題がともない、特に収益性とコストのバランスをどう取るかが重要だ。一度復活しても再び廃止論が浮上することを避けるため、持続可能な運行体制を構築する必要がある。 ●出資体制の明確化 夜行列車の運行には多額の投資が必要だ。そのため、これまで夜行列車を運行してきたJRグループを中心に、民間企業や投資家の参入が不可欠になる。さらに、観光業者や地方自治体にも積極的に出資を呼びかけ、安定した運行を支える仕組みを構築する必要がある。 具体的には、JR各社が協力して夜行用車両の標準仕様を策定し、それをベースに各社が独自のカスタマイズを施す形が理想的だ。この方法を採れば製造規模を拡大でき、コスト高の問題も抑えられるだろう。 ●車両の調達とコスト管理 既存の車両をリニューアルすることで、コストを抑えつつ快適な乗車環境を提供することが可能だ。例えば、JR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」では、新快速列車で使用された117系電車を改造し、夜行列車にも対応できる仕様にした事例がある。このようなリニューアル車両は、コスト面でも新規の機関車と客車を組み合わせるよりも、イニシャルコストやランニングコストを抑えることができる。もちろん、新規車両の開発や海外からの調達も選択肢として検討する価値があるが、予算と導入スケジュールには慎重を期する必要がある。 また、筆者は、夜行列車と貨物列車を担当する新たな企業「JR夜行」が登場してもよいと考えている。例えば、コンテナを旅客寝台として利用するアイデアもある。鉄道にコンテナハウスの概念を取り入れることで、新しい移動手段としての可能性を広げることができるだろう。 ●運行管理と競争優位性 夜行列車が新幹線や高速バス、格安航空と競合するなかで、ターゲット層を明確にし、差別化を図ることが重要だ。ビジネスユーザーや観光ニーズに対応したプランを構築することがカギとなる。例えば、移動中の食事を楽しみたいと考える旅行者も一定数存在する。かつての「北斗星」や「カシオペア」のように、移動とともに沿線の質の高い食事を楽しめるサービスを提供するアイデアが有効だ。 また、現在の「サンライズ」にはシャワールームがあるが、さらに進化させた風呂車両を導入するなど、他の移動手段では提供しづらいサービスを提供することが差別化につながる。食事や風呂などで独自性を打ち出し、限られた空間からでもエキストラチャージを生み出す努力が必要だ。 これらの方法を取り入れることで、夜行列車は再び復活を遂げると考えられる。