「バットが変わった高校野球で時代を制したい」スモールベースボール偏重は危険?…“150キロトリオ”で甲子園準優勝の名伯楽が「長打は正義」と語るワケ
須江監督があえて「大味な野球」を見せたワケは?
仙台育英はスモールベースボールの引き出しが多彩で、それを体現できる選手たちもいる。にもかかわらず、須江がそこに固執せず大味な野球も見せていたのには大きな理由がある。 「実績がないので説得力がないかもしれないんですけど」 新チームに関してそう恐縮しながらも、須江が語調を強める。 「バットが変わった高校野球で、仙台育英は時代を制していきたいんです」 今春から「飛ばないバット」が導入されたことで、夏の甲子園では金属バットが導入された1974年以降では最少となる7本しかホームランが出ず、その分、小技を駆使した野球を高い次元で発揮できたチームが上位に進出した印象が強かった。 優勝した京都国際はチーム打率が3割2分4厘に対し長打が10本とバッティングが光った一方で、6試合を戦い盗塁は1ながら犠打は20と堅実さもあった。準優勝の関東一も盗塁は3だったが犠打は17を記録し、チーム打率2割3分で6本しか長打が出なかった攻撃を補った。 須江はこれらを「スモールベースボール」と画一的に論じず、「ダイヤモンド(内野)で展開する野球」と独自の見解を示している。 「新しいバットは直径が細くなった(67ミリ未満から64ミリ未満)ので、『飛ばない』ではなく“芯が狭くなったバット”と言っているんです。そのことが長打の減った要因のひとつであり、ゴロや低いライナーとか打球の角度を下げたり、セーフティスクイズやエンドランといった小技で攻めていく野球が目立つようになりましたよね。それが、このバットが導入された1年目の答えなんだと思います。 じゃあ、これからもそれが王道でいいと決めつけてしまうのは、僕は危険じゃないかと思うんです。だからうちは、勝利と育成を本当の意味で両立する意味でも、ダイヤモンドで展開する緻密さと外野の頭を越えていくような長打を掛け合わせた、ハイブリッドの野球を目指したいんです」
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