ベテラン29歳、年齢は「非公開にしてほしい(笑)」 誰もが幸福に誘われる大庭雅のスケート愛【全日本フィギュア】
「スクリーンに年齢を出すのはやめてほしい(笑)」
若年齢化が目立つこの競技において、29歳となっても第一線を追う大庭の存在は異質だ。「スクリーンに年齢を出すのはやめてほしい(笑)。ホント非公開にしてほしいんですけど、恥ずかしくて」。2010年、中3で初めて全日本に出場してから今も継続する原動力はスケートへの愛に他ならない。 氷には毎日乗り、基本的に完全オフは設けない。「自分がスケートが大好きというのが一番の原動力です」。360度、大観衆に囲まれた全日本のリンクで最高の演技をすることをずっと頭に思い描いてきた。 「リンクサイド、氷の上から見た景色って、一度見たら絶対また来たい場所だと思うんですよ。夢の舞台なのかなと思います」 昔に比べて疲労が取れない。脚にくるし、呼吸が乱れるのも早くなった。「辞めます」「引退する」と周囲に溢したことも。挫けそうになっても、全日本でしか味わえない感覚を求めて奮い立った。 大学卒業を区切りとし、競技を引退するのがフィギュア界の主流の一つ。流れに抗い続けている大庭は「自分の中では『ここからがシニアの演技ができるのに!』と強く思います」と惜しむ。願いは「みんな辞めちゃうから」と考えがちな分岐点で「続けてもいいんだ」の選択肢も加わることだ。 来年には30歳を迎える。「自分にとっていつが最後かは決められない。1試合1試合、最後かもしれないと思って後悔なく演技しようと思っています」。今大会、11年ぶり出場の37歳・織田信成が「年齢はただの数字」の言葉を証明した。大庭もまだ自らに進化の可能性を感じている。 「ジャンプの難易度、スピン、スケーティング、伸ばせるところしかない。続けられるのであれば、1試合1試合選手寿命を延ばしていければ」。SP、フリーともにシーズンベストとなった全日本は総合21位。それ以上に爽やかな印象を、2024年の締めくくりに残した。
THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi