波乱のレースでライバル圧倒、太田格之進が今季初優勝。王者争いは坪井翔と牧野任祐の一騎打ちに【第8戦決勝レポート】
2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の決勝レースが11月9日、三重県の鈴鹿サーキットで開催された。アクシデントが多発しチェッカーを受けたのは21台中、15台というサバイバルレースの様相を呈したが、ポールポジションからスタートした太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が他を寄せ付けぬペースを披露して今季初優勝を飾った。 【写真】表彰台で笑顔の坪井翔と太田格之進。牧野任祐に笑みはない 2位にはピット作業でオーバーカットを成功させた坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が入り、坪井とタイトルを争う牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3位に。 まさかの予選Q1敗退から7列目スタートとなった野尻智紀(TEAM MUGEN)は、驚異の追い上げで14番手から5位までリカバーしたが、坪井とのポイント差が25.5ポイントに開き、逆転タイトルの可能性が消滅。10日(日)の最終戦に向け、今季のチャンピオン候補は坪井と牧野の2名に絞られることとなった。 ■2番手走行の佐藤蓮に悲劇 コーススケジュールの遅れにより、当初の予定より10分遅れの14時40分にフォーメーションラップが始まり、気温21度、路面温度は31度と日差しの暖かさを感じるようなドライコンディションのなか、シグナルのブラックアウトとともに31周のレースがスタートした。 ポールシッターの太田が抜群の蹴り出しで真っ先に1コーナーへ飛び込んでいった一方、2番グリッドの岩佐歩夢(TEAM MUGEN)はスタートできず。マシントラブルが出てしまったようで最後尾に下がってしまう。また17番グリッドにつけていた三宅淳嗣(ThreeBond Racing)もスタート直後にミッショントラブルが発生したか、コースサイドにマシンを止めている。 オープニングラップは太田、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、牧野というトップ3に、坪井、山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)と続く。 坪井とのポイント差を縮めたい牧野は、タイムギャップが小さい序盤のうちに佐藤をとらえようとオーバーテイクシステム(OTS)を使って詰め寄っていくが、2番手に順位を上げた佐藤もディフェンスでOTSを使ってポジションキープする。 その後方では野尻が国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)をとらえて10番手まで順位を上げると、6周目にはスプーンカーブで笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)のインに飛び込んでいき9番手に浮上。これに乗じて11番手につけていた山下健太(KONDO RACING)も笹原に迫っていき、7周目の1コーナーでポジションアップに成功している。 レースは10周を終了し、ピット作業が可能に。上位陣の中でミニマム周回でのタイヤ交換を選択したのは牧野、阪口、そして7番手を走行する福住仁嶺(Kids com Team KCMG)と野尻。その翌周には佐藤、坪井、山下がピットに入ってくるが、佐藤は作業直後に左リヤタイヤが外れるアクシデントに見舞われる。ピットロード上でクルマを止め、リタイアとなった佐藤はマシンを降りた直後、悔しさをあらわにした。 ■2度のSCで築いたマージンが消滅 同じタイミングでピットインした坪井は牧野の前でコース復帰し、アウトラップでもしっかりと牧野をおさえてオーバーカットに成功する。タイヤ交換を済ませた“裏”の組は、坪井、牧野、阪口、福住、野尻という順。太田は山本とともに12周を終了したタイミングでピットに戻ると、坪井の前でコースに戻りトップをキープしたまま後半スティントに入っていった。 18周を終えるところで、平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がピットイン。タイヤ交換を済ませてピットロードを出ていったが、その直後に右リヤタイヤが外れてしまう。平良は1コーナ手前のコースサイドにマシンを止めたが、タイヤは1コーナーの先のコース脇まで転がり続け、2コーナーまで進んでようやく止まった。このアクシデントにより、太田が20周目に入ったところでレースはセーフティカー(SC)が入る。 この時点での順位は、太田を先頭に坪井、牧野、阪口、福住、野尻というトップ6。タイヤとマシンの回収を終え、23周目に入るところでリスタートが切られたが、今度はスプーンカーブで笹原が挙動を乱しスピン。その真後ろにいた大嶋和也(docomo business ROOKIE)と接触し、大嶋はバックストレートでマシンを止めてしまう。わずか5分前にリスタートしたばかりのレースは、これで2度目のSC導入を迎えることとなった。 2度目のSCは28周目に隊列を離れ、レースは残り3周で再開。互いにタイトルを争うライバルの前でゴールしたい牧野と坪井は、バックストレッチでOTSを使いあいながらポジションを争う。 その後ろでは野尻が福住を130Rで攻略して5番手まで追い上げていた。トップの太田は30周目と最終ラップでファステストラップを連発しながら後続を突き放し、トップチェッカー。2024年シーズン今季優勝は、前年の最終戦鈴鹿以来の勝利となった。 接近戦が繰り広げられるなか、最後まで牧野を抑え続けた坪井が2位、牧野が3位でフィニッシュしたことにより、両者のポイント差は18.5ポイント差に拡大した。野尻の猛追をしのぎ切った阪口が4位で今季ベストリザルトとなり、野尻、福住が続くトップ6となった。 [オートスポーツweb 2024年11月09日]