ネコ動画を地球に届けたレーザー、最長飛距離を更新中
光通信の仕組み
1950年代の最初の衛星打ち上げ以来、NASAなどの宇宙機関は、宇宙と地球の間のデータ送受信の手段として無線通信を使ってきました。無線もレーザーも同じ電磁スペクトルの一部であり、同じ速度で進みますが、周波数が違います。レーザーのデータ通信は電磁スペクトルの中でも近赤外線の方の周波数で、高周波になります。つまり一定の距離で見ると、無線周波数よりも赤外線の波が多くの波が入るため、赤外線での通信にはより多くのデータを詰め込めるということです。 「それは入れられるデータ量に影響します」とSrinivasan氏。 「そしてもちろん、それによってより高解像度のデータ送受信が可能になります。同じ時間の枠内に、より多くを送れるのですから。」 DSOCでは、現在の宇宙船で使われている無線通信システムの10~100倍のデータ転送速度を目指しています。 冒頭のネコ動画の場合、サイキに搭載している通信速度360kbpsの従来型無線送信機では、送信に426秒かかります。一方DSOCの通信速度は267Mbpsで、送信にかかる時間はたった0.58秒でした。無線でもレーザーでも、地球に届くまでの速度は光速なので、かかる時間は同じです。 「光通信では、望遠鏡とレーザーを使って通信するので、レーザービームをパルスにして送ります」とSrinivasan氏は説明します。DSOCの実験ではフライトレーザートランシーバー1台に対し、地上ステーション2台を使いました。地上ステーションは、受信用がカリフォルニア工科大学の管理するパロマー天文台のヘール望遠鏡、送信用がNASA・ジェット推進研究所のテーブルマウンテン観測所にある光通信望遠鏡研究所です。 送信用ステーションはフライトターミナルに向けてパルス状のレーザー信号を送り、フライトターミナルには光子を数えられるカメラが搭載されています。フライトターミナルは地上の送信機をビーコンとして使い、レーザーを送る方向に照準を合わせます。フライトターミナルも地球側に向けて、データをレーザーのパルスにして送ります。