【異次元の少子化対策】児童手当が増えても「扶養控除」が減ってしまう!? 扶養控除が廃止された場合、児童手当が増えても「損をする家庭」をシミュレーション
日本政府による「異次元の少子化対策」の目玉として、児童手当の大幅な拡充が検討されています。実現すれば子育て世代にはうれしい法改正ですが、一方で財源確保のために「扶養控除」が削減されることにより、かえって増税となる世帯が出るという批判もあります。 本記事では、どのような家庭が「損をする」のか、現在公開されている数字をもとにシミュレーションします。 ▼「大学無償化制度」の対象者とは? 年収要件や注意点を解説
児童手当は、どれだけ増えるの?
現在閣議決定されている「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」のとおりに法律が改正されると、以下のように制度が変更されます。 (1)支給期間を中学生までから高校生年代までとする (2)支給要件のうち所得制限を撤廃する (3)第2子以降の児童に係る支給額を月額3万円とする (4)支払月を年3回から隔月(偶数月)の年6回とする これにより以下の条件に当てはまる家庭の場合は、年間の児童手当額が増えると予想されます。 1. 高校生年代の子ども(1人目)を扶養している世帯 …子ども1人当たり年間12万円の増額 2. 2人以上の子ども(高校生年代まで)を扶養している世帯 …2人目の子ども1人当たり年間18万円(子どもが3歳未満の場合)~36万円(子どもが高校生年代の場合)の増額。3人目以降の子ども1人当たり年間18万円(子どもが小学生までの場合)~36万円(子どもが高校生年代の場合)の増額 以上のとおり、特に高校生以下の子どもを2人以上扶養している世帯においては、大きな支援の拡充といえるでしょう。
扶養控除が廃止されたら、どれだけ増税になるの?
一方で、児童手当増額の財源を確保するために「扶養控除」が廃止されるともいわれています。現在は以下のとおり扶養控除が設定されており、高校生世代の子どもを扶養している人の所得税・住民税が軽減されています。 所得税…扶養する子どもが16歳以上19歳未満の場合、1人当たり38万円の控除 住民税…扶養する子どもが16歳以上19歳未満の場合、1人当たり33万円の控除 もし上記の扶養控除が完全に廃止された場合、16歳以上19歳未満(高校生世代)の子どもを扶養している親世代にとっては、所得によって図表1の通り所得税・住民税の金額が上昇し、負担増となると予想されます。 例えば、課税所得金額が195万円未満・高校生世代の扶養人数1人の場合、所得税は廃止される扶養控除額38万円×所得税率5%=1万9000円が、住民税は廃止される扶養控除額33万円×住民税率10%=3万3000円が、それぞれ増税となり、合計の増税額は5万2000円となります。 図表1