在宅勤務でもソフトスキルを高める7つのステップ
■在宅勤務がソフトスキルの獲得を困難にする フルタイムの在宅勤務では、共感力、創造性、問題解決能力などのソフトスキルを磨くことは難しい。同僚とある程度のペースで直接、顔を合わせなければ、社会的合図やコミュニケーション、コラボレーション、チームワークのニュアンスをつかむことができないからである。 では、ズーム会議が当たり前の時代にソフトスキルを身につけるにはどうすればよいだろうか。チャットやビデオ会議などのテクノロジーを、どうすれば賢く活用できるだろうか。オフィスにいる同僚と同じ質と量のフィードバックを確実に受け取るためには、どのようなステップを踏めばよいだろうか。 ■専門家の意見 デジタル時代でも、ソフトスキルは不可欠である。リンクトインの最近の調査によると、米国のエグゼクティブの72%が、ソフトスキルをAI関連のスキル以上に重視している。エグゼクティブのコーチング、トレーニング、チームビルディングを専門とするフランスのユーマナヴァ(Humanava)の共同創業者兼CEOである、アルノー・コレリーも、それは当然だと言う。 コレリーは加えて、ソフトスキルの開発を優先する組織は生産性が大きく向上し、従業員のパフォーマンスも高まると言う。さらに、ソフトスキルが高い人材はキャリアで成功を収めることが多い。「フランスではソフトスキルを『competences transversales』(汎用的コンピーテンシー)と呼ぶ。あらゆる種類のプロフェッショナルな状況で伸ばすことができるスキル、という意味だ」 リモートワークでは、このようなソフトスキルを培うことが難しくなるかもしれないが、不可能ではないとするのが、ペンシルベニア大学ウォートンスクールの副学部長で経営学教授のナンシー・ロスバードだ。「対面で仕事をしない時は、人との関わり方をより意識しなければなりません。自分をどのように見せるか、人にどのような印象を与える可能性があるか、さらに考える必要があります」 在宅勤務でソフトスキルを高めたい人は、以下のステップを試してみよう。 ■自分のソフトスキルを精査する 最初に、自分がどのようなソフトスキルを強化したいのかを理解する必要があると、コラリーは言う。「キャリアの初期には、特定のテクニカルスキルの習得や、一流企業で働くなど、履歴書でアピールできることを増やそうと躍起になる人が多いものです。しかし、そうではなく、個性を伸ばすことを考えるべきです。自分に足りないものは何か。何に取り組む必要があるのかを見極めるのです」。自分が伸ばすべきスキルをあらためて考え、友人や同僚、メンターに自分の長所と短所について率直な意見を求めよ、とコラリーは助言する。 次に、これらのスキルをどのように伸ばすかという計画が必要になる。「自分が目標とするところに到達するためのロードマップ」を考えるのだ。たとえば、創造性を高めたいなら、自分の意欲をかき立てて、コンフォートゾーンの外に押し出すような活動を探す。即興演習を受講する、デッサンのセミナーや地元の芸術祭に参加するなど、さまざまな機会があるだろう。 ■一対一で共有できる価値観を構築する 廊下で気軽に雑談をしたり、チームビルディングのためのハッピーアワーに出かけたりする機会がないのだから、同僚との交流について、慎重さと戦略が必要になる。ロスバードは「共有された現実」を同僚と構築すべきと助言する。「共通の土台をつくり、共通の価値観を構築します。彼らの生活での経験や状況を理解する手助けになるような質問をして、情報を集めるのです」 仕事に関する好みについて質問するような、小さなところから始めるとよいと、コラリーは言う。「最も生産的になれるタイミングや、どのようにフローに乗る(時間を忘れて没頭すること)のかを聞いてみる。働くリズムを共有して、互いに相手が最も調子のよいタイミングを知ることです」。さらに掘り下げて、「情熱や原動力について質問します。仕事の以外の話をする時は、同僚が人間としてどのような人なのかを理解するように努めます」 こうした会話は信頼関係の構築を促し、感情的知性(EI)を磨く機会をもたらす。目的は誰とでも仲良くなることではなく、「尊敬と信頼の土台をつくること」であり、それが仕事上の関係を強化するとコラリーは言う。 ■同僚に自分は認められている、耳を傾けてもらっていると思わせる バーチャルの世界では、チームミーティングはスクリーン越しで、立て続けに行われ、いきなり本題に入って脱線する余裕がないことも多い。格子状の枠の中で顔だけを出したまま長く過ごしたい人など、いるだろうか。 ロスバードは、このような無為に思える時間も、グループの中で同僚とつながり、人間関係を育む貴重な機会になると言う。「本心からの興味を示し、耳を傾けるスキルを磨くことです。相手の話に注意を払い、彼らの言葉を宙ぶらりんにせず、たとえば振り返って言及するのです」 記憶力に自信がない人は、次の休暇の旅行先やペットの名前と種類など、相手が話す些細なことをメモしてみようとロスバードは言う。これは営業担当者の昔ながらのやり方だ。これらの情報を使って相手の話をフォローしながら、仕事以外の部分も気にかけていることを示すのだ。立ち入りすぎることはもちろん禁物だが、「注意を払われていると感じさせ、話を聞いてもらっていると思わせる」ことが大切だ。