パソコンで作った遺言書は“無効”?…遺言者の意思を“確実に”残すための「公正証書遺言」とは?【税理士監修】
費用がかからず手軽に作成できる「自筆証書遺言」と、紛失等を避けられるものの作成に手間がかかる「公正証書遺言」。それぞれにメリット・デメリットがありますが、条件を満たしていないと、遺言書が「無効」になるリスクも。本稿では、古尾谷裕昭氏監修の『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋し、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類について解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
遺言書の作成(1):本人が自筆で作成する「自筆証書遺言」
法的に認められるにはいくつかの条件がある 遺言書を残しておくことで、自分の財産をどうするかを決めることができるほか、自分の死後に遺産を巡るトラブルを避けられます。 遺言書としてもっとも手軽なのが自分で書く「自筆証書遺言」です。証人も不要なので、内容を他者に知られず作成できます。ただし法的な効力を持つためには一定の条件があり、満たしていない場合、無効になってしまう可能性もあるので注意が必要です。 また、自分で保管する場合、その間の紛失や偽造、盗難といったリスクがあります。なお、「自筆証書遺言書保管制度」を利用すればリスクをある程度回避でき、家庭裁判所における検認も不要となります。 自筆証書遺言のメリット・デメリット 自筆証書遺言は気軽に作成できる一方で、いくつかのデメリットもあります。まず、間違いのないよう作成し、デメリットについても対策が必要です。 自筆証書遺言とは:自筆で作成した遺言書で、代筆やパソコンは不可(遺言書に添付する財産目録は自筆でなくてもよい)。 【メリット】 ・自分で思い立ったときに作成でき、変更も容易 ・証人が不要で、内容を人に知られずに済む ・費用がほとんどかからない 【デメリット】 ・自筆での作成や日付の記入など、条件を満たしていないと無効になる ・紛失、偽造、盗難などのリスクがある ・自分の死後、発見されない可能性がある ・家庭裁判所での検認が必要 法務局で遺言書を保管できる 2020年7月より始まった「自筆証書遺言書保管制度」。自筆証書遺言を法務局に保管できるサービスで、紛失などのリスクがなくなるほか、家庭裁判所での検認が不要になるなど、自筆証書遺言のデメリットをある程度解消してくれます。 【遺言者の生前】 (1)遺言書の作成 (2)遺言書の保管申請(3,900円/通) 手続きには法務局での事前予約が必要! 【保管中に遺言者ができること】 ・預けた遺言書の閲覧 ・遺言書を返してもらう(保管の申請の撤回) ・預けた後で生じた住所等の変更 法務局に赴く場合は事前予約が必要! 【相続開始後】 ・遺言書保管事実証明書(800円/通) ・遺言書情報証明書(1,400円/通) ・遺言書閲覧(モニター:1,400円/回 原本:1,700円/回) ※遺言者による遺言書の保管の申請の撤回や住所等の変更の届出については、手数料は不要。 ※手数料は収入印紙を手数料納付用紙に貼って納める。 遺言の内容を秘密にできる秘密証書遺言もある 遺言書の内容を秘密にしながら、遺言書が存在するという公的な証明を行い、紛失などのリスクを回避するのが「秘密証書遺言」です。 証人を2人要するほか、公証役場で手続きを行う必要があります。 【費用】 ・公証役場に支払う手数料1万1,000円 ・証人への謝礼(1人につき5,000~1万円程度) 【必要書類】 〈遺言者〉 ・遺言書(署名・押印が必須) ・遺言書に押印した印鑑 ・身分証 〈証人〉 ・身分証 ・認め印