消防士の友人が「出動したら700円支給される」と言っていました。兄が勤めている消防署では「1回300円」だそうですが、地域によって異なるのでしょうか?
さまざまな災害現場で消火や人命救助にあたる消防士。その特殊性から、従事した業務に応じた「特殊勤務手当」が設けられており、出動に対して支給される「出動手当」もそのひとつです。しかし、支給金額は地域の条例などで決定されるため、勤務地によって金額が異なる場合があります。 今回は、消防士の出動手当の内容や地域差、最終的な年収などについて解説します。 ▼「公務員は安定している」って本当? 定年退職の割合や退職金の平均額を教えて!
出動手当には地域差がある
消防士の出動手当の算定方法は、地域によって異なります。ここでは具体例として、東京都と神奈川県横須賀市の出動手当を取りあげます。 東京都の出動手当は「東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例」で規定されており、算定方法は次の3パターンです。 ●1回あたり最大700円 ●1時間あたり最大900円 ●1日あたり最大5500円(原子力災害など、特定の条件下では最大4万2000円に引き上げ) 支給額は、東京都人事委員会で承認を得たのち、「東京都規則」に基づいて決定されます。 これに対し、神奈川県横須賀市の災害出動手当は、「消防吏員特殊勤務手当支給条例」によって、1回あたり300円と決められています。東京都のように、時間や日数に対応した料金形態は設けられていません。ただし、深刻度が高い災害にあたる場合は、「出動した日数×2300円」が追加支給されます。 また、支給額に地域差があるのは出動手当だけではありません。特殊勤務手当には「救急手当」や「火災調査手当」なども含まれ、これらの金額も地域ごとに異なります。
出動手当以外にもさまざまな手当が設けられている
出動手当以外の特殊勤務手当について、例えば「東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例」では、次の9つが定められています。 ・救急手当:1回あたり最大710円 救急事故などに出動し、救急業務などに従事した職員が対象。 ・火災調査手当:1日あたり最大330円 火災現場などで火災原因などの調査に従事した職員が対象。 ・査察業務手当:1日あたり最大300円 消防対象物に立ち入り、火災予防のため、立ち入り検査などに従事した職員が対象。 ・救出救助手当:1日あたり最大4000円または1回あたり最大840円(例外あり) 災害などにおける救出救助や、国際緊急援助などに従事した職員が対象。 ・高所活動危険手当:1日あたり最大220円 はしごなどを使い、高所での消防活動などに従事した職員が対象。 ・ヘリコプター従事手当:1時間あたり最大5600円(例外あり)もしくは1日あたり最大1230円 ヘリコプターに搭乗し業務に従事した職員および、ヘリコプターの点検、整備に従事した職員が対象。 ・管制手当:1日あたり最大200円。 消防部隊の運用などの管制業務に従事した職員が対象。 ・夜間緊急招集手当:1回あたり最大1300円 正規の勤務時間外に、緊急に呼び出され、業務に従事した職員が対象。 ・深夜特殊業務手当:1勤務あたり最大490円 正規の勤務時間が、22時から翌朝5時のあいだにかかる交替制勤務に従事した職員が対象。 一方、神奈川県横須賀市の「消防吏員特殊勤務手当支給条例」による規定では、救急出動手当は1回あたり150円(例外あり)、国際緊急援助隊手当は1日あたり4000円です。 また、人命救助などのため潜水作業に従事した職員に、1時間あたり最大1000円を支給する「潜水手当」が設けられています。特殊勤務手当は、金額だけでなく、内容にも地域差があることが分かるでしょう。 なお、総務省の「令和5年 地方公務員給与の実態」によると、「消防職」の特殊勤務手当の平均月額は7898円です。