彬子女王殿下が教える大学の授業とは レポートのホチキスの留め方から丁寧に指導
「学問は面白い」の種をまく
――日本に帰国後は日本美術の研究者として活躍されています。現在は京都産業大学で特別教授として学生を指導しています。 実はずっと「教える」ということを避けてきたのです。私の恩師たちはすばらしい先生方で、とても同じように学生を指導することはできないと思っていました。でも「教える」のではなく、私が面白いと思っていることを学生に「伝える」ことはできるのではないか、と。私自身、歴代の先生方から「学問は面白い」という種をまいていただき、水を与えて育てていただきました。私もその種まきの仕事を引きついでいけたら、と考えるようになりました。 ――授業では、座学だけでなく、フィールドワークにも行かれているそうですね。 伝統文化の工房に学生を連れて行き、職人さんたちに取材しています。私自身はこのようにインタビューを受ける機会があるので、学生たちに「先生方が過去のインタビューで何度も聞かれているような質問はしないでね」「著書を読んで気になった部分を深掘りすると、相手は『こんなところまで読んでくれた』とうれしくなるものです」などとアドバイスしています。 ――取材を数多く受けてきた経験を生かして、学生に伝えているのですね。彬子女王さまは、厳しい先生ですか。 学生に求めているものは大きいと思います。たとえば、誤字脱字に修正の線を引いたまま提出するとか、参考文献がインターネットの「知恵袋」とか、気になるレポートも少なくありません。何も言わずに点数を低くするという方法もあるのでしょうけれど、それでは学生の学びになりません。 私は「誤字脱字が残ったものは完成原稿ではありませんよ」「情報の信憑性には気をつけましょう」「だから点数を引かざるを得ないのですよ」と、きちんと伝えるようにしています。最近では「レポートのホチキス留めの位置は、縦書きなら右上、横書きなら左上。そうじゃないと、めくりづらいから」というようなことも教えています(笑)。