円建て生命保険、「金利ある世界」で復権 明治安田はヒット飛ばす
日本銀行の政策転換で「金利ある世界」に戻りつつある中、生命保険業界で円建て保険の復権が鮮明になっている。マイナス金利下では魅力ある商品づくりが難しく、多くの生保が円建て商品の販売を取りやめていた。明治安田生命保険がヒットを飛ばすなど、久々となった金融環境の転換が生保市場に波及している。 【関連画像】朝日生命は円建ての一時払い終身保険を8年ぶりに発売する 「米ドルなど外貨建ての(商品の)売れ行きが鈍化し、円建ての人気が復活してきたと把握している」。11月15日、生保各社が加盟する生命保険協会の永島英器会長(明治安田社長)は記者会見で足元の市場動向についてこう語った。 複数の生保幹部によると「年換算保険料で見て、2年前には外貨建て終身保険と円建て終身保険の割合は7対3ほどだった。2023年前半くらいから円建ての割合が増加し、足元では5.5対4.5ほどになっている」という。円建て保険への回帰が進む。保険会社も需要の変化を受けて動いている。 朝日生命保険は12月2日、保険料を一括で納める円建ての終身保険「あさひの一時払終身」の販売を始める。同社が円建ての一時払い終身保険を販売するのは16年以来8年ぶり。30歳の男性が100万円の保険料を払うと、死亡時に受け取れる保険金は138万3800円(予定利率1.0%の場合)となる。 朝日生命に先行して、外資系のマニュライフ生命保険が4月に、メットライフ生命保険も7月に、円建て一時払い終身保険の取り扱いを相次いで再開した。 ●利回りが上向き再評価 一時払いの終身保険を販売する生保各社は、将来の保険金支払いに備えて10年国債を中心に資金を運用するのが一般的だ。マイナス金利下ではこの国債の利回りが0%近辺に張り付いてしまい、顧客を引きつけられる利回りを提供できなくなっていた。 22年から10年国債の利回りが上昇し始め、円建て保険の利回りも上向いたことで徐々に再評価が進んできた。業界推計によると、23年度に金融機関の窓口を経由して販売された円建て一時払い保険の販売額は約2.7兆円と前の年度の約1.7倍に増えた。一方、対抗馬である外貨建て一時払い保険の販売額は約4.2兆円と横ばいだった。 一時払い終身保険以外でも円建て回帰の動きが見られる。明治安田では、10月2日に発売したばかりの円建て個人年金保険「明治安田の長期運用年金」が好調。同社における円建て個人年金保険の23年度1年間の契約件数を10月だけで上回ったという。