円建て生命保険、「金利ある世界」で復権 明治安田はヒット飛ばす
保険料を毎月支払う商品で、強みはその予定利率。足元では1.4%と円建て保険において業界最高水準に設定している。さらに「金利キャッチアップ配当」という独自の仕組みを導入し、今後、市場金利が上昇した場合には契約者が将来受け取る年金の総額も増えるようにした。 明治安田の住吉敏幸専務執行役は「長期で安定的な資産形成のために、円建てを求める顧客は根強くいる。国内金利の上昇も相まって、円建て商品のラインアップを充実させることは非常に大きなテーマだと考えている」と話す。 ●新NISAと家計資産を争奪 円建て保険が低迷している間、需要の受け皿となってきたのは外貨建て保険だ。円建て保険を上回る利回りで、資産形成を目的とする顧客が支持した。依然として外貨建て保険の利回りは円建て保険をしのぐ。それでも円建て保険への回帰が起きているのは、外貨建て保険に付き物の為替リスクが意識されていることが一因と見られる。 対ドルの円相場は24年6月に一時160円台まで下落。そこからやや戻したものの、なお1ドル=155円台の円安水準にある。保険の買い手にとっては、たとえ利回りが高くても、円高に振れた時に発生する為替差損を意識せざるを得ない局面といえる。円建て保険は利回りが低い一方で、その安定性は強みだ。 保険会社にとっても、今、外貨建て保険を売るにはリスクがある。販売時にいくら丁寧に為替リスクについて説明したとしても、実際に受取保険金が大きく目減りするといった事態になれば顧客とトラブルになるのが、外貨建て保険の過去の歴史だからだ。 長年、多くの日本人にとって預貯金と共に資産運用の柱だった保険は曲がり角に立っている。新NISA(少額投資非課税制度)のスタートを受けて、家計の資産運用が変化。「貯蓄から投資へ」という言葉がよく使われるが、実際に起きているのは「保険から投資へ」の資金シフトだとの指摘もある(参考記事:楽天・SBIを追うPayPay 証券NISA戦争が増幅する「保険から投資」)。 保険各社は今後、円建て保険への販売シフトを強めると見られる。新NISAという新たなライバルが登場したのを受けて、業界内でのシェアの奪い合いだけではなく、家計の金融資産の争奪戦という意味でも各社の商品開発力が問われることになる。
佐々木 大智