「みんななかよく」50歳になったハローキティが伝え続ける、現会長の「戦争反対」への強い思い
サンリオという企業の良心
50歳になったハローキティ同様、ファンも一緒に年齢を重ね、推し活文化も花開いた今、大人の女性がサンリオショップで「いちご新聞ください」と言っても、全然しょっぱくなくなった。その意味では、良い時代となっている。 1975年創刊の『いちご新聞』。ハローキティに遅れること1年、来年創刊50周年を迎える。サンリオが毎月、世に送り出す、おびただしい数の新商品やさまざまな人気キャラクターの誕生日といった情報をファンに伝えるのが『いちご新聞』の役目である。言うなれば、新商品カタログだ。だからこそ、物価高が叫ばれる今も付録つきで220円と激安で発売している。 だが、いちごの王さまの本気の巻頭メッセージがあることで、17年前の私が書いたように、サンリオという企業の良心も伝わってくる、非常にユニークな機関紙である。2025年の50周年の夏にも、いちごの王さまの戦争反対のメッセージがぜひ掲載されてほしい、と心から思う。
自分から相手を信じ、尊敬し、愛すること
少額株主として、私がサンリオの第60回定時株主総会(2020年8月26日)に出席したさいも、辻会長は故郷で焼夷弾を落とされた経験を語り、戦争の悲惨さを語っていた。かつては当然、業績報告をしていたはずだが、そうしたデータや今後の施策についての報告は、孫の辻朋邦社長や役員に任せ、延々と、と言っていいほど「戦争はいけない」と語り続けた。2024年現在、96歳となった今もご健在だが、当時92歳の辻会長が自社の好調な業績を喜ぶ一方で、一向に戦争がなくならない世界の現実に焦燥感を持っているのをヒシヒシと感じ、企業理念「みんななかよく」の根底にある信念に胸を打たれ、襟を正した。 「みんななかよく」という、平仮名7文字の企業理念。サンリオのコーポレートメッセージのページも、平仮名多めで子どもが読んでもわかりやすい文章が掲載されている。特に注目したいのが、 「仲間とは、親子、兄弟、夫婦、友人、恋人といった身近な存在から、学校や会社の同僚、そして世界中のひとびとにまで広がっています。それらのひとたちと理解しあい、仲よくしていくために大切なのは、自分から相手を信じ、尊敬し、愛すること。そして、そうした気持ちを表現すること…これが、サンリオを支える考え方です。」 という部分だ。「自分から」というのがポイントだろう。「みんななかよく」は受け身では実現しないと言っているのである。