放置林が洪水を引き起こす可能性も…間伐などの育林作業が「防災対策」になるワケ[FRaU]
国土の約7割が森林に覆われている日本。ですが、その森林の約4割を占める人工林でさまざまな問題が起きています。日本特有の状況や林業の課題について、基本を学びます。
Q.いま注目されている自伐型林業とは? A.環境保全と経済の持続性。両方を考える小さな林業です。 細かな分業化がなされていた林業ですが、いま注目されているのは、山の所有者や、所有者から土地を借りた若い人々や移住者が、自ら山に木を植え、草刈りなどをしながら丁寧に育てて伐採までする「自伐型林業」です。大規模な会社経営ではなく、小さな家族経営をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。 メリットは、自分たちで作業を行うことによって利益を出し、規模は小さくても、安定した経営ができること。また、皆伐をせずに、森の環境保全と両立した林業を行うのも特徴です。自分たちで管理できる面積を扱うので、山に生えている一本一本の木、すべての林道、その林道で使える機械などを把握でき、必要な量を効率的、かつ環境にやさしく伐採が行えるのです。禿げ山を造らないことで土砂災害を防いだり、人が山に入ることで獣害対策になるといった利点も。 自伐型林業だけで生計を立てているケースは稀ですが、林業は季節労働なので副業として携わりやすく、地方創生の新たな鍵として自治体が力を入れ始めています。
Q.人工林は自然災害に弱いのですか? A.必ずしも弱いわけではないですが、一部の傾斜地でリスクが高まります。 山や森林で自然災害のリスクが最も高いのは、木や草が生えていない裸地です。人工林は木が育っているので裸地ほど自然災害に弱いわけではありませんが、間伐が行われていない放置林では、木によって太陽光が遮られ、下層部にほとんど植生が発達しなくなります。すると、雨水が地表に直接当たるように。雨は落ち葉を流してしまうので、やがて地表は土が露わになったツルツルの状態になります。 すると今度は、雨水が地表を滑るように流れてゆくことに。これでは地層深くまで水が浸透しづらく、森の貯水機能が落ちてしまうのです。そうした状態では川に流れ出す雨水の量が不安定となり、洪水が起きる要因になります。こうした理由からも、間伐をはじめとする育林作業は防災対策となるのです。