放置林が洪水を引き起こす可能性も…間伐などの育林作業が「防災対策」になるワケ[FRaU]
Q.未来の森を守る仕事「フォレスター」とは? A.環境面も経済面も考慮しながら長い目で森を管理する技術者です。 フォレスターとは、科学的根拠に基づいて、森林の管理や林業経営に対する指導を行う技術者です。環境と経済の両方を考慮しながら、行政や林業を営む企業と共に、持続可能な森林を育てていきます。欧米には専門の学校もあるくらいで、国によってはマイスターの称号を与えられることもある名誉ある仕事です。 日本にも森林総合監理士(日本版フォレスター)という仕事がありますが、教育制度が十分とはいえず、欧米のフォレスターほど発言権のある立場にはなっていません。この状況を改善しなければ、場当たり的な森林開発や上辺だけの環境保護が繰り返されるだけでしょう。 知識と立場のあるフォレスターの元では、森林所有者は正しい森林管理技術指導を受けられます。行政は森林活用に適切な助言をもらったり、区分や取り扱いを定める整備計画を立ててもらうこともできます。 森の未来を考える時、その目は数十年、数百年先を見据えていないといけません。フォレスターとは、森と人の付き合い方を多角的に考えられる人物なのです。
Q.日本の森林のために私たちにできることは? A.この国に根づく“木の文化”に目を向けてみてください。 欧米の「石の文化」に対し、日本は「木の文化」だと言われています。縄文時代から住居や生活道具に木が多用され、神社仏閣や工芸品にも様々な木材が用いられてきました。木は信仰の対象でもあり、樹齢を重ねた巨木は御神木として崇められています。森林は日本人の生き方や精神性に密接に関わってきたのです。 現代でもそれは同じ。コンクリートやプラスティックばかりを身近に感じているかもしれませんが、今でも戸建てのほとんどが木造で、壁紙を剥がせばすぐ裏に木組みが現れます。国産のミネラルウォーターは山々が雨水を濾過したものですし、私たちの日常には森の恵みが溢れています。そうしたことを少しでも意識することが、この国の森林を守る第一歩になるはずです。 ●情報は、FRaU2024年8月号発売時点のものです。