なぜ、だいたいのお店がこのガムなのか? 市川紗椰が「焼き肉屋のレジでもらう謎ガム」の正体に迫る!
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、焼き肉屋でもらう謎ガムについて語る。 * * * 以前、『プレバト!!』(MBS・TBS系)の俳句ランキング回に出演させていただきました。テーマは「焼き肉」。自分にとっての焼き肉の思い出や、みんなが感じたであろう"焼き肉あるある"などをブレストしているとき、お店での会計が思い浮かびました。 焼き肉屋(特に韓国料理屋さん寄りのお店)に行くと、レジでガムがもらえますよね。ピンク?ラベンダー?色の包み紙に、英字で「LOTTE Extria Dessert Gum」と書かれた板ガム。 どこのお店でも、置いてあるのはだいたいこのガム。でも、売っているのを見たことがない。ほかのガムでも良さそうなのに、わざわざ韓国で買っているのか。焼き肉のお会計時にだけ"召喚"される、幻の品の正体に迫ってみた。 このガム、何度も何度も食べている割に、いったい何味なのかもわからない。うっすらミントのような清涼感はあるけど、はっきりしません。パッケージは、商品名以外はすべてハングル。韓国語が堪能な友人と翻訳アプリを活用してみましたが、そもそも情報が少ない。何味かも表記されておらず、原材料が書いてあるだけ。 その原材料もシンプルで、「白砂糖、ガムベース、合成香料、D-ソルビトール液、乳化剤、グリセリン」だけです。ほかのガムと比べても特徴のない、普通のガム。なんなら「甘味料」ではなく「白砂糖」を使用している分、ちょっといいガムなのかも!? 食感は日本のガムよりも柔らかくて、ぐにゃぐにゃしている印象です。 情報を求めてロッテのサイトを見ても、何も載ってない!......と思ったら、「Extria」は日本のロッテとは違う韓国ロッテの製品だそう。つまり、日本で販売している商品ではなく、並行輸入品。個人輸入も可能だけど、バラ売りはなく、箱で買う必要があるみたいです。3700枚で8000円。1枚2円ちょっとだから、かなり安い。しかし、3700枚はいらないし、いらないガムに8000円使うのはもったいない。 なぜ輸入してまでこのガムが選ばれているのか、焼き肉屋さんに聞いてみました。そのお店の答えは「配る用だから」。韓国では飲食店の食後のお口直しだけでなく、謝恩品や販促用にもこのガムが使われているとか。「そもそも、なぜこれが配る用なの?」という疑問は残ったけど、とにかく配るガムとしては定番だから、これを選んでるとのことです。 配る用だと、ほかにもヘテという韓国メーカーの「スーパーミント」も一般的だそう。調べたら、やはり焼き肉屋さんで見た覚えあり!シンプルなパッケージと数分で消えるミント味、日本では韓国料理屋や焼き肉屋でしか見ない気がするけど、「ヘテ」自体は韓国では知らない人がいない企業だそうです。 そもそも焼き肉屋さんが帰りがけにガムをくれるのは、口の中をさっぱりさせて口臭を軽減させるために加えて、胃腸の働きを活発にさせて消化を助けるため、という狙いもあるといわれています。最近はガムではなく、アメやタブレットも増えていますね。板ガム自体減っているから、当たり前なんだろうけど......。 ちなみに私が考えた焼き肉の俳句は、しっかり「凡人」という評価をいただきました。 ●市川紗椰1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。謎ガムは、味の持ちが激短いところも特徴。公式Instagram【@sayaichikawa.official】