パルグループ、奈良県の廃校から町おこし アパレル経験生かす
パルグループホールディングス(HD)は、奈良県吉野郡下市町に地方創生事業の拠点となる複合商業施設「キト フォレスト マーケット シモイチ(KITO FOREST MARKET SHIMOICHI)」を5日に開業した。廃校となった小学校を改装し、町の魅力発信や体験、交流の場とすることでにぎわいを作る。産業の活性化と地域の雇用や移住促進などにつなげる。初年度の来館者数は4万人を目標とする。 【画像】パルグループ、奈良県の廃校から町おこし アパレル経験生かす
下市町は奈良県のほぼ中央に位置し、割り箸などの木工業、柿や梨の産地としても有名だ。今春、経営の一線から退いたパルグループHDの創業者・井上英隆氏の故郷でもある。下市町を盛り上げたいという井上氏の思いを受け継ぎ、孫で同社経営企画室の井上真央氏がプロジェクトを企画した。廃校になる前の旧下市南小学校の校舎を見て、地方創生事業への活用を思いついたのがきっかけだ。
下市町が行った公募で事業者に選定され、建物と敷地は5年間無償で提供される。ディレクターや店長などプロジェクトの主要メンバーは、アパレル事業で経験を積んだベテランが社内公募制度で参画した。
新施設のミッションは地元の声を反映し、「お客さまが下市に来たくなる理由を作る」とした。衣・食・住・遊・働・学・健のコンテンツを集積した複合型商業施設であり、人と体験をつなぐ役割を担うことをめざす。「まずは関係性を作り、いずれは移住したくなるような町の拠点にする。そのために30~40代女性とファミリーをメインターゲットにした商業プラットフォームを作った」と井上真央氏は話す。
地元の林業の文化を伝える
旧下市南小学校は2003年に開校した4階建ての建物で、設備などは比較的新しい。敷地面積は約6700平方メートル、校舎と体育館を合わせた床面積は約3900平方メートル。校内には放送スタジオやエレベーターも備えている。山間の豊かな自然と調和するように随所に地元の木材が使われ、木のぬくもりを感じられる。設計デザインを担当したドロワーズの小倉寛之社長は「教室として使っていた頃の記憶を残しながら、材木工場の倉庫のイメージを取り入れたり、薬草の押し花や吉野杉の割り箸の端材を使ってアートにしたり、地元の歴史や文化が伝わるデザインにした」と話す。