パルグループ、奈良県の廃校から町おこし アパレル経験生かす
校舎の1階には、焼きたての薪窯ピザと自家醸造のクラフトビールを楽しめるレストランとビール醸造所、そして地元の農家が持ち寄る農産物、観光客向けの土産品などを販売する店舗とカフェスタンドを設置した。レストランの薪窯では下市町の木材を使い、食器には地元の赤膚焼(あかはだやき)の窯元が製作した奈良らしい柄入りの皿やカップを使っている。
地元の農産物や木材を使ったオリジナル商品の開発にも取り組む。第1弾のクラフトビールは、下市町産の柿や桃、キウイ、レモングラス、奈良県産のイチゴを使い、ECやイベントなどで販売する。「アパレルのポップアップで販売するとおしゃれ女子に好評」(井上真央氏)という。地域での循環をめざし、規格外品やシーズン終わりの果物を活用しているのも特徴だ。オリジナルプリンのフレーバーは山椒とほうじ茶の2種類。ほうじ茶味は、隣町の五條市にあるさかもと養鶏の濃厚たまごと、大淀町の嘉兵衛本舗のほうじ茶を使ったプリン生地に、下市町産のニホンミツバチのはちみつをたっぷりかけた。山椒味は、下市町産の山椒を使った少しスパイシーでクセになる風味が人気だ。カフェスタンドのジェラートにも地元産のフルーツが多用されている。
2階には、地元の木工作家の作品を委託販売するショップやギャラリー、ワークショップを行う体験ルーム、キッズルーム、3階にはシェアオフィスを開設した。
素通りの町から目的の町へ
体育館には、アートと木をテーマにした全天候型の子供の遊び場「ウッドパーク」を設けた。 入り口には「パタゴニア」のTシャツも手がけるグラフィックデザイナーによる壁面アートがあり、館内には吉野杉の廃材をふんだんに使った遊具と什器が配置されている。ユニークなのは、割り箸を製作するときに出る端材を積み上げてブロックにした巨大な迷路。遊びを通して子供たちにもSDGsを学んでほしいという。下市町には書店がないため、個人や企業から寄贈された約2000冊を収蔵する巨大な本棚も設置した。ステージには奈良県の特産品である蚊帳を使った遊具があり、館内には保護者が座れる廃材のベンチも設置した。