TOKIがテストネットローンチ、イーサリアムとBNBチェーンをIBCで繋ぐ初の事例へ、貢献者にはエアドロも
TOKIがテストネットローンチ
クロスチェーンブリッジ開発のTOKI(トキ)によるインセンティブテストネットのローンチが9月2日に発表された。クロスチェーンブリッジは、パブリックブロックチェーン間でクロスチェーン取引を可能にする技術だ。 TOKIは、コスモス(Cosmos)エコシステムのチェーンをつなげるIBC(ブロックチェーン間通信)を採用し、TEE(Trusted Execution Environment)やゼロ知識証明(zero knowledge proof:zkp)といったセキュリティモデルを組み合わせ、「マルチプルーバーセキュリティ」という独自のアプローチにてコスモスエコシステム外のブロックチェーン同士をつなげることを進めていた。TEEやZKPを用いることで、IBCのセキュリティを損なわずにコスト効率も改善することに成功したという(IBC・TEE・ZKPについては後述)。 TOKIがメインネットローンチとなれば、シームレスな1クリックのネイティブトークンスワップを可能にする片側統合流動性プールを備えた、イーサリアムとBNBチェーン間の最初のIBC接続が確立するとのことだ。 なお今回公開されたテストネットでは、イーサリアム(Ethereum)のテストネットであるセポリア(Sepolia)とBNBチェーンを構成するBSC(バイナンススマートチェーン)のテストネット間で、両チェーンのデモトークンの転送が可能だ。 テストネットでトークン転送を行うには、ガス代となる「ETHおよびBNBのテストネットトークン」をAlchemy、Google、BNB Chainが提供する外部のFaucetページから取得し、TOKIのFaucetページから転送テストの対象トークンとなる、両チェーンの「デモトークンとなるUSDCおよびUSDT」を取得する必要がある。 現在同テストネットでは、Transfer(転送)機能のみがアクティブとなっているという。流動性供給を行うPool&Earn機能は10~11月に利用可能になるとのこと。 また2025年第1四半期にはベータ版のメインネットローンチ、2025年第1四半期以降にメインネットローンチが計画されているとのことだ。 なお今回のテストネットは「インセンティブテストネット」とある通り、貢献者にはTOKIからトークンエアドロップの機会が与えられる。ロジックハックや不要なトランザクション量を避けるため、現時点ではエアドロッププログラムの具体的な基準は公開しないとのことだが、テストネットとメインネットの両方でアプリケーションに貢献し続けることで、その機会が獲得できると示唆されている。 TOKIは昨年6月、三菱UFJ信託銀行、Datachain(データチェーン)とマルチチェーンで展開されるステーブルコインのクロスチェーン取引を可能にするインフラ構築を目指すための技術提携を開始。三菱UFJ信託銀行が推進するステーブルコイン発行管理基盤「Progmat Coin(プログマコイン)」によって発行される予定のステーブルコインが、様々なパブリックブロックチェーン上で発行・流通されることを想定して、3社はインフラ構築を行うとした。 TOKIは、同社提供のインフラと、日本の法律に準拠したステーブルコインの発行を可能にするプラットフォームを提供するProgmatと連携することが、注目すべき成果の一つと述べている。この統合によりTOKIは、サークル社開発のUSDCのCCTP(クロスチェーン転送プロトコル)と同様に機能し、チェーン間でのシームレスなステーブルコインの転送が可能になると強調している。 またその他にTOKIは昨年12月、Datachainおよびゲーム特化型ブロックチェーンOasys(オアシス)と提携。この提携によりOasysは、DatachainやTOKIが開発を推進するブロックチェーン間通信プロトコル「IBC」への対応を検討すると発表している。 なお上記にて言及したIBCとは、コスモス(Cosmos)エコシステム内のプロジェクトによって策定されたブロックチェーン同士を相互運用する為の標準仕様である。これを採用することでブロックチェーンを跨いだトークン転送などのデータ通信が可能になる。 またTEEとは、ICカードのセキュリティ等の標準技術の策定を行う非営利組織GlobalPlatformが定める技術仕様のひとつで、プロセッサーを通常の実行環境と安全な実行環境に分割することによって、アプリケーションの安全な実行環境を物理的に確保するセキュリティ技術。 そしてゼロ知識証明とは、ある主張が正しいという事実を主張内容を明かすことなく、第三者に証明できる暗号学のプロトコルだ。
大津賀新也(幻冬舎 あたらしい経済)