今、買われやすい通貨は? 投資家が注目する予想実質金利からわかること
USD/JPYが4月に入ってから、一時107円台に突入しました。この背景には、1.日銀の追加緩和期待が盛り上がらない、2.政府の為替介入が難しいなどの日本サイドの要因もありますが、本質的には米国の予想実質金利が低下している影響が大きいと考えられます。この実質金利という概念は為替のみならず金融・経済を理解する上で極めて重要なので理解しておく必要があります。 実質金利とは名目金利(市場金利)からインフレ率を引いたもので、例えば名目金利が3%でインフレ率が2%だった場合、実質金利は1%になります。一般的に投資家はインフレに負けないようにリターンを追及しているので、この実質金利が高い状態にある国の通貨は買われやすくなる傾向があります。
米ドルと円の金利差を比べてみると
投資家は常に将来の予想に基づいて取引するので、現実の実質金利よりも将来の実質金利に興味があります。将来の実質金利は、名目金利から予想インフレ率を差し引くことで求められ、それを予想実質金利と表現します。 米国の予想実質金利は2015年12月頃から低下傾向にあり、これは1.米連邦公開市場委員会(FRB)の利上げ計画が当初の4回から2回に下方修正されたことなどを背景に名目金利が低下するなか、2.原油安が一服して予想インフレ率低下に歯止めがかかったことが影響しています。 要するに「名目金利低下・予想インフレ率横ばい→予想実質金利低下」という構図です。 ※金融・経済の文章でしばしば見かける期待インフレ率、期待成長率など“期待○○”という表現がありますが、ここでいう「期待」とは“hope”の意味ではなく、“expect”の「予想」という意味合いです。本文では全て「予想」に統一します。 次に日本の予想実質金利をみていきます。先ず名目金利に着目すると日銀の強力な金融緩和の下で低下基調にあり、その流れは1月29日のマイナス金利発表により一段と強まりました。名目10年金利はマイナスが常態化しており、▲0.1%近傍で推移しています。他方、予想インフレ率は原油価格の下落一服にもかかわらず、戻りが鈍い状況にあり、その結果として16年入り後は実質金利が高止まりしています(※円高進行そのものが円ベースの輸入物価下落→国内物価下落というパスで予想インフレ率の低下につながっているという側面もあります)。要するに名目金利の低下以上に予想インフレ率が低下したため、予想実質金利が上昇したということです。予想実質金利の上昇は通貨高、すわなち円高要因です。