今、買われやすい通貨は? 投資家が注目する予想実質金利からわかること
これらを踏まえたうえで、日米の予想実質金利差とUSD/JPYを比較します。チャートをみると、USD/JPYの変動を綺麗に説明していることがみて取れます。米国の予想実質金利が低下してドル安圧力が生じるのと同時に、日本の予想実質金利が上昇傾向にあり円高圧力が生じているため、双方が円高・ドル安を支持しています。これが昨年12月から続くUSD/JPY下落の説明として最も説得力があると筆者は考えています。
予想実質金利の低下が示すもの
一方、これまでUSD/JPYの変動を説明してきた日米名目2年債金利差(以下、日米名目金利差)は足元でほとんど“使いものにならない”状態になっています。なぜでしょうか? これまでの日米名目金利差をみると、日本の名目金利が日銀の金融緩和の下で低位安定するなか、米国のそれがFRBの利上げを織り込む下で上昇、その結果として金利差が拡大してきました。 とくにこの2年くらいはFRBの利上げが為替マーケットのメインテーマだったこともあって「米国経済回復→FRB利上げ観測→USD金利上昇→USD買い」というトレードが流行り、FRBの利上げ観測がUSD/JPY上昇に直結していました。 しかしながら、最近の動き(図中の★以降)をみてみると、利上げ観測の高まりがUSD/JPY上昇につながっていません。それは上述した米国の予想実質金利が上昇しないからです。 ここであらためて予想実質金利の考え方を整理します。上述のとおり「予想実質金利=名目金利-予想インフレ率」でした。投資家(資金の出し手・債券購入者)はインフレに負けないリターンを求めるので、インフレ率を上回る利子が実質金利(インフレに負けない実質的に受け取れる金利)に相当します。 今度は債券発行者(資金の受け手・債券発行者)の立場で考えます。彼らは、インフレ率+αの成長が見込まれるからこそ、借金をしてそのおカネを事業に投資するのです。つまり、インフレ率を除いて実質的に成長できる予想がそこにあるのです。これを予想実質成長率といいます。結局、予想実質成長率と予想実質金利は、立場の違いによって呼び名が変わるだけで、ほとんど同じ意味になります。