共働きは”老後貧乏”を救う 「~の壁」を意識する人ほど損をする
家計を考えた場合は、夫婦がそれぞれ別に仕事を持って働くということは資産形成の面で非常に強いアドバンテージがあります。なぜなら一人で年収800万円を稼ぐよりも例えば二人でそれぞれ500万円と300万円を稼いだ方が税金も少なくなります。何よりも収入の絶対額が増えることは非常に大きいと言えるでしょう。
複数の収入源を持つメリット
それに家計において複数の収入源を持つということはリスク管理の面からみても極めて大切なことです。何らかの理由でどちらかが離職せざるを得なくなった場合でもダメージをやわらげることができるからです。それでもいわゆる専業主婦といわれる世帯もまだまだ一定割合はあるようです。しかしながら専業主婦とはいっても何らかの形での短時間労働をしている人はかなり多いだろうと思います。俗に言う主婦のパート勤務ですね。 ところが夫が働くのは、ほとんどの場合家族を養うためであるのに対して、妻がパートで働くというのは、目的が多様です。 「夫の収入が少ないので家計の足しに働く」というケースから、「生活は十分にやっていけるけど自分の買いたいものや欲しいものを買うために働く」という場合。そして「収入自体を得ることよりも社会的なつながりを持ちたいために外で働きたい」といった具合に働く動機はさまざまのようです。 いずれの動機ももっともなもので、それが良いとか悪いという話ではないのですが、私は少し視点を変えて「老後のために」働くという目的があってもいいのかなと思っています。つまり生活自体は何とかがんばって配偶者の給料だけで生活し、一方の働く分を老後に備えるための貯蓄とするのです。 もちろんこれは金額にもよると思いますが、多くの場合主婦のパートで得られる金額はそれほど多くはありません。俗に言われている「103万円の壁」や「130万円の壁」によって税や社会保険料の負担を少なくするため、あえて低い水準のままでいるケースも多いからです。 たとえば時給が900円で一日5時間、週に4日間働いたとしましょう。この場合、年間の収入は約86万円です。仮に40歳から60歳まで働いた場合、その金額を累計すると1720万円になるのです。30歳から働けば、期間は30年になりますからさらに増えて2580万円です。もし、これだけの金額が、夫が退職するときに積みあがっていたとすれば、どうでしょう。老後の生活についてはかなり安定感が高まるのは間違いないだろうと思います。 退職後にかかる生活費をおおよそ25万円と仮定すれば、夫婦二人が共に90歳まで生きていたとして、65歳以降の生活費は7500万円。これに対して、収入はどれぐらい見込めるでしょうか。サラリーマンの場合、65歳から90歳までの間に受け取れる公的年金の金額は25年間のトータルでおよそ6500万円程度が平均的な金額と言われていますから、退職金が仮に1000万円あれば、生活費はそれだけでまかなえます。 これに加えてパートで貯めた1720万円や2580万円の貯蓄があれば、かなりゆとりができるでしょう。もし退職金がなかったとしても、これなら何とかなります。それに夫の年収を100万円増やすというのは今の時代であればかなり大変ですが、妻が働くことで同じ金額を増やすのはそれほど大変なことではありません。