【インタビュー】マラッカ海峡協議会会長・池田潤一郎氏、マラッカ・シンガポール海峡の航行安全を支える日本の取り組み
国際物流のチョークポイント(要衝)の紅海でイエメンの武装組織フーシ派による船舶攻撃が相次ぎ、海上輸送を中心としたグローバルサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性への懸念が高まっている。紅海からスエズ運河に至るルートに加え、水不足に起因するパナマ運河の通航制限など、海峡という要衝が改めてクローズアップされていると言える。一方で、世界で最も交通量が多く、日本のシーレーン(海上交通路)を支えるマラッカ・シンガポール海峡(マ・シ海峡)は長年、大事故もなく安全性が担保されてきた。同海峡の航行安全を半世紀以上にわたり支えてきた日本の民間団体、マラッカ海峡協議会の活躍はあまり知られていない。国際物流の要衝の中で特に重要なマ・シ海峡での日本の取り組みについて、マラッカ海峡協議会の池田潤一郎会長に聞いた。 (聞き手 幡野武彦)
■浅瀬多い危険地帯 ――改めてマ・シ海峡の重要性についてうかがいたい。 「いま注目を集めている紅海(を通航する船)は世界の海上輸送の10%を占めているといわれているが、マ・シ海峡は35%で、世界で最も通航量が多く、混雑している海峡として知られている。運航船舶数は年間約13万隻(2012年調査)で、スエズ運河の8倍、パナマ運河の10倍。紅海・スエズやパナマと比べても桁違いの通航量と言える」 「中東からの石油などの資源を含めて、日本経済を支えるエネルギー輸送の大半はマ・シ海峡を通航するので、まさにわが国にとっての生命線といえる」 「一方で、マ・シ海峡は全長1000キロメートルと長いが、そのうち東側の500キロメートルは浅瀬が多い危険地帯。また、インドネシア、マレーシア、シンガポールと沿岸3カ国の領海にまたがるほか、水深20メートル未満の浅瀬も多いなど自然条件も厳しい。世界最大の通航量を誇る交通の要衝であるばかりでなく、多数の漁船や海峡横断船がある中、これまで深刻な船舶事故が起きなかったのは奇跡に近いと言えるのではないか」