「パ・リーグ改革」真のMVPは”意外な人物”だった…!「我らのパシフィックリーグ」はいかにして守られたのか
〈パの経営改善策(2)〉球団・球場の経営一体化
かつては各球団とも、「球場使用料問題」が悩みのタネとなっていた。2004年の球界再編で消滅した「大阪近鉄バファローズ」も、本拠地移転後に大阪ドームに支払っていた年間10億円の使用料が、経営を悪化させる要因にもなった。 パ・リーグでは、ソフトバンクが約870億円を投じて投資会社から「みずほPayPayドーム福岡」(福岡ドーム)を買収。年間約50億円の使用料を削減した。また日本ハムは自前の球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中心に、グルメやアクティビティを楽しめる「ボールパーク」全体で収益を取っている。 ロッテ・楽天は地元自治体が、西武は親会社の西武鉄道が球場を保有し、球団が管理者を受託、使用料を削減している。オリックスも大阪ドームを買収したため、実質的に自前だ。 いずれの球団も球界再編後に動きがあり、さらにパ・リーグの各地の球場はネーミングライツ(命名権)で、プラスの収入を得ている。「大阪近鉄バファローズ」消滅の一因となった「球場使用料問題」から、各球団ならびに親会社が学んだ結果と言えるだろう。
〈パの経営改善策(3)〉世界に広げた配信事業
2004年の球界再編当時にほぼなく、いま見込めるものと言えば「配信収入」だ。現在パ・リーグでは、6球団共同で立ち上げた「パシフィックリーグマーケティング(以下:PLM)」が「DAZN」「パ・リーグTV」(パテレ)などの配信を一括で管理し、各球団に協力金を分配している。 各プラットフォームを合わせた配信視聴者は、6年前の7倍以上に増加。PLMの経営面で見ても、07年には1.8 億円だった売上は2015年には16億円を越え、直近の23年12月期には売上約60億円、純利益2.2億円を計上。6球団への貢献とビジネスを、しっかり両立させているといえるだろう。 なかでも「パテレ」は、「野球ファン以外にも楽しめる野球」を提供した功績が大きい。2時間、3時間のゲーム視聴を好まない「タイパ重視」組にも、白熱した好プレーを1~2分サイズで提供。ゲームの楽しみ方や選手のストロングポイント(強み)を、手広く見せてくれる。 例えば、野球を見ない方でも「すごい!」と分かる源田壮亮選手(西武)の動画を視聴すれば、「源田たまらん」とタイトルがついた関連動画への回遊が始まる。 いつしか今宮健太選手(ソフトバンク)の内野守備、万波中正選手(日本ハム)のバックホーム返球、はてはプレイ以外にも、男子高校生のようなオリックスベンチのワチャワチャ、吉井理人監督(ロッテ)が代走を告げるポーズが可愛い(59歳)、など…都合10~20分の視聴で、プロ野球の醍醐味やツウの楽しみ方を堪能できる。 ここからファンを育て、DAZNや各プラットフォーム契約に繋がれば、分配金を通じてパ・リーグ各球団が潤う。 こういった配信は、放映権料のしがらみがあるセ・リーグでは、なかなか話がまとまらない。いまでも「パテレ」のような「セテレ」(セ・リーグTV)はなく、既存の地上波中継局との絡みもあって、DAZNでのセ・リーグ全球団中継も実現していない。 一方でパ・リーグは配信視聴の客層を着実に取り込み、24年6月からはアメリカ「One Baseball Network」との提携で、中・南米40ヵ国(最大視聴世帯数約500万世帯)の配信を開始。 いまや日本の野球はWBC制覇、日本人選手の活躍などで世界に知られるようになっており、各国では「日本の野球=あの大谷翔平選手が在籍したパ・リーグ」と認識されていくのかもしれない。