「パ・リーグ改革」真のMVPは”意外な人物”だった…!「我らのパシフィックリーグ」はいかにして守られたのか
潮目を変えた「たかが選手が!」発言
今から20年前、2004年に巻き起こったプロ野球の「球界再編騒動」を、覚えている方も多いだろう。「2リーグ制・12球団」体制を、2球団減の「1リーグ制・10球団」に変えるという構想への反発は激しく、日本プロ野球選手会・古田敦也会長(ヤクルトスワローズ)のもとで、日本プロ野球で唯一のストライキ(試合拒否)が行われたことは、いまも記憶に新しい。 【写真】す、すけている…全米も絶賛!大谷翔平の妻・真美子さん「衝撃のドレス姿」 当時は、古田会長が球団経営陣に直接交渉を求めた際に、とあるオ-ナーが放った、 「無礼な!分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が!」 という発言が野球ファンの怒りを呼び、翌日から報道各社で大きく扱われた(なぜか1社だけ、記事が極端に少ない)。 対話姿勢をないがしろにされた選手会側への同情が、巨大な世論のうねりとなり、再編は頓挫。結果として、楽天ゴールデンイーグルスが新規参入、大阪近鉄バファローズがオリックスバファローズと合併・解散というかたちで、12球団体制が維持され今に至る。 ただ、再編を促した経営者側にも事情があった。当時のプロ野球界の経営状況は、セ・リーグが「1試合1億円」とも言われる読売ジャイアンツ(巨人)の放映権料頼み。パ・リーグは巨人戦の放映権料を得られないため、恒久的に赤字が続いていたのだ。 根本的な問題である「パ・リーグ不採算問題」。各球団の経営はいまもなお決して楽とはいえないが、セ・リーグと違う形での施策が実を結び、各球団とも黒字転換、もしくは採算ラインに近い状態を続けている。 球界再編問題を機に、パ・リーグはどのような経営改善を行ってきたのか。連盟歌「白いボールのファンタジー」に「我らのパシフィックリーグ」とうたわれたパ・リーグは、いかにして守られたのか。それぞれの取り組みを見てみよう。
〈パの経営改善策(1)〉ライバルは居酒屋&カラオケ!
巨人戦の地上波中継が行われていた頃の収益構造は、セ・リーグ球団は「入場料5割、放映権料2~3割」。パ・リーグは「入場料7割。放映権料1~2割」といったところだ(2004年8月8日、TBS「がっちりマンデー」より)。再編問題後のパ・リーグ6球団は、収入アップのカギを握る入場者の獲得に、真っ先に取り組む必要があった。 特徴的な施策を打ったのが、新規参入組の「東北楽天ゴールデンイーグルス」(以下:楽天イーグルス)だ。EC事業(ネット通販)の会社としてデータマーケティングのノウハウを持つ楽天は、平日夜に開催されるナイトゲームの集客のライバルとして、会社帰りにサラリーマンがワイワイと集まる居酒屋やカラオケを位置付けたという。 通常なら野球に興味がある層へのアプローチをかけるが、新規参入の球団、かつプロ野球に馴染みがない仙台市で、コアな客層は限られる。一方で、楽天イーグルスの関係者が夜の仙台でリサーチした限り、繁華街は仕事を終えたサラリーマンで賑わっていた。仙台のサラリーマンの“コト体験”ニーズは「退勤後に仕事仲間で集まって、賑やかに楽しむ」ことだったのだ。 そこで楽天イーグルスは、しゃべりづらい横一列の座席だけでなく、居酒屋のように楽しめるボックスシートを積極的に売り出す。野球に興味のない人は同僚との会話を楽しみ、試合が盛り上がったらみんなで観戦…気が付けば“みんなファンになっている”という仕掛けだ。 なお、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズでもこういった客層を「アクティブサラリーマン」と位置付けて観戦需要を掘り起こし、大幅な集客増を達成している。