三日月大造・滋賀県知事に聞く「交通政策は長寿社会の鍵」(全文3完)
昨年10月に総務省が発表した平成27年の国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、人口減少に転じた日本。このまま人口が減り続けた場合、自治体としての機能を果たせない地域が出てくると危惧されています。そうした中、人口減少が進む地方の首長は、どのようなビジョンを持ち、政策を行っているのでしょう。 首長インタビューの第1回は、2014年に48年ぶりに人口減少に転じた滋賀県の三日月大造知事に話を聞きました。(インタビューは2016年12月に実施)
交通網のアクセス良い地域ばかりが有利では?
──観光でみても、京都から10分くらいで来られたりするというのは県南部。交通網の関係でアクセスがいいところは有利だと思うが、交通アクセスが発達していないところは観光でも不利だし、子育て世代の流入とか企業の誘致という点でも、影響はすごく大きい。地域間格差をどう考えるか。 おっしゃったとおり交通のアクセス、インフラがその地域の魅力につながったり、人口流入もしくは人口減少に効いたり、影響したりっていうことは、僕はあると思う。あると思いますので、できるだけ交通インフラが整えられた、人も移動できるし、そして行きたいと思ったら行ける、できるだけ低コストで、そして便利にっていう環境を作りたいなと思って、今、道路整備や公共交通の整備にも取り組んでいます。
ただ一方で、少し離れているからこそ感じられる情緒や風景っていうものもあって、そういうものも同時に残しながら、地域の環境整備が出来たらいいなと思っています。例えば、湖西を走る湖西線などは、長いし、少し列車本数も少なくて不便だったりするんですけれども、でも隣に比良山、比叡山っていう山々がすぐそばにあって、そして場所によっては琵琶湖の風景も眺められる。そういう鉄道ですよ。例えばこういうものを、他の地域にはない、列車本数が便利で頻繁に行き来するだけじゃない楽しみっていうのも発信できたらいいなと思っているし。 湖北には湖北で、米原駅という滋賀県唯一の新幹線の駅、玄関口があって、確かにのぞみは停まらないけれども、ひかりとこだまは停まる。そういうもので来てもらって、例えば観音様が各地域にいらっしゃる、その地域を巡っていただいたり、戦国武将ゆかりの地域がたくさんあるので、今回も石田三成にスポットライトを当ててPRしたんですけれども、例えば、そういう取り組みだったり。そういうことをやることによって、僕は交通至便な地域にはない打ち出し方や楽しみ方が作れるんじゃないかなと思っているんですけれどもね。 ──交通網を隅々まで行き渡らせる、便利にするのには、お金がかかる。その必要な投資はしつつも、どんどん増やしていく、整えていくというよりは、現状を生かした、不便さもポジティブに出来るような発信をイメージしている? ぜひ、そうしたいと思っていますし、私自身も交通関係の検討会議に出席をしてね。確かに道路整備の要望は多いですよ。それには、必要なものは応えていきます。ただ、皆さん考えてくださいと。道路を整備しても運転できますかと。運転、ずっとこれから10年20年続けられますかって言うと、いや、そうなんだよなと。道路を整備できても、車に乗れなくなるんだよなと。でしょと。であれば、今の道路をもっと、例えば歩いてでもそうだし、バスもちゃんと通ってるとか、そういった形に変えたり、磨いたり、整え直したりすることも大事ですよねって言うと、いや、そうだって言ってくださるので。そういうことが、実は、この人口減少局面を迎えた地域作りの、非常に大事なことかなとも思っているんですよね。