三日月大造・滋賀県知事に聞く「交通政策は長寿社会の鍵」(全文3完)
国と地方の関係、50年後の滋賀について思うこと
──北陸新幹線の延伸でもそうだったが、地方のことをいろいろやろうと思って、でも国との関係でなかなかうまくいかない場合や、予算の関係で抑えられることとかいろいろあると思う。国会議員から知事になったので、非常によくお分かりかと思うが、知事がイメージする国と地方の関係、これからどうあるべきか。 私は国会で10年余り仕事をさせていただいて感じたというか、思うところが強くあって滋賀県の知事になりました。むしろローカルこそオリジナルだし、ローカルこそグローバルなんですよね。国全体ではなかなか進められない取り組みを、地方だからこそ進められる。住民の皆さんとも近いところで、予算はどう使われているんだろう、どんな効果があったんだろう、っていうことをダイレクトに確かめ合いながら合意形成して、政策を前に進めていける。で、そのやった結果もまたフィードバックできるという意味においては、僕はすごくある意味ではダイナミックだと思っているし、むしろそういう地方自治体のいろんな取り組みがガシャガシャガシャガシャと動くことで、国全体が前に進んだり、国全体が豊かになるような、そういう国作りが、僕は理想だと思っています。だから、各都道府県の知事や市町村の市長さんや町長さんたちと切磋琢磨しながら、地方を元気にして、国を豊かにしていく。そういう取り組みに挑んでいるところです。 ──地方の施策で成功例などがあって、それに国が引っぱられるように。 引っぱられるっていうか、例えば、環境行政や福祉行政は滋賀県が作ってきたっていう自負があります。例えば、今も神奈川でのああいう悲しい事件もありました。僕たちは今年度から障害のある人もない人も共に学ぶ環境作りをしようということで、特別支援学校での特別な教育も大事にしながら、しかし地域の学校にも同時に籍を置ける複籍の取り組みをして、今、国に対して、こういう制度を作ったらどうですかと働きかけています。 琵琶湖をお預かりしているので、いろんな水質は絶えず見ています。確かに高度成長期に一時期、汚れたんだけれども改善してきた。それはCOD(化学的酸素要求量)とかBOD(生物化学的酸素要求量)っていう指標でやってきたんですけれども。でも、それだけだと測れない物質とか汚れとか生態系の変化っていうのがあることに気付きはじめたので、今度は新たなTOC(全有機炭素)という、有機の物質がどう変化しているんだろう、どう含まれているんだろうっていうことを解明する指標を新たに作りはじめているんです。これは国と一緒に。で、国の国立環境研究所も、来年の4月に、一部、滋賀県に移転してきます。ですから、そういう福祉とか教育とか環境の分野では、国ではなかなか分からない、そういう実態を、滋賀で取り組んでみたり。で、この滋賀で出来たことを今度は国の制度に広げていくっていうようなことに挑戦しはじめているんですよね。 だから、何もかも国で決められたことを地方でやるっていうのではなくて、地方こそ先進県だと。地方こそ現場に近いからいろんなことが出来るんだっていうことをこれからもどんどん体現していけば、国全体のいろんな制度も整っていくのかなと思っています。だから僕は、国会でいろんな物事がどう決まるのか、いつ決まるのか、誰が決めるのかっていうのも、ある程度知っているので、そういうこともぜひ、糧にしながら地方行政を作っていきたいなと。 ──最後に、今、人口減少時代に入った状況だと思うんですけれども、50年後の滋賀のイメージとそこに向かう意気込みっていうのを教えていただきたいです。 50年後は私が95歳ですので、生きていれば、恐らく自分の人生を振り返りながら、いよいよ旅立ちに向けていろんなことを考えていると思うんです。僕は、やっぱり人生を終える時に、ああ豊かだったなあ、ここで終えられてよかったな、この人たちに囲まれて目を閉じるっていう、その瞬間って、やっぱり人が一番どうだったかっていうことを考える瞬間だと思うんです。その瞬間に、この滋賀で育ってよかった、滋賀でこの人生の最期を終えられてよかったと思えるような。より多くの人たちが感じていただけるような、そういう滋賀。そういう滋賀の空間。そういう滋賀の、例えば福祉や医療の制度。そういうものを整えていきたい。ある意味では守っていきたい。そして作っていきたいと思うんですよね。やっぱり人生を終える時の一番最後の瞬間っていうのを絶えず見ながら、滋賀作りを皆さんと一緒にしていけたらいいなと思っています。 ──それを一言でおっしゃるとしたら、どういう。何とか滋賀、みたいにおっしゃるとしたら、どういった。 よく、いろいろ話しているんですけれども、人生終えるなら滋賀。旅立つなら滋賀。とかね。 ──50年後、ある程度、今より人は減っているかもしれないけれども、福祉や医療については十分に受けられて。 豊かにしたいと思う。で、福祉や医療っていうことだけじゃなくて、やっぱり、周りの人たちとの関係ですね。それも豊かにしたいし。ギスギスしていなくて。そして周りに緑があって、水があって、それらがきれいで。で、ああ、こういったところで自分は年を重ねられて幸せだな、とか。ああ、ここで子供たちが育って、孫たちが育って、自分はそろそろ旅立つ。ああ、いいなあと、こう思える。そういう滋賀を作りたいなと思ってる。 ──ありがとうございました。 ありがとうございました。