ポーランド映画の現在地<4>…巨匠アンジェイ・ワイダの足跡たどる展覧会、つなぐ映画学校
「ワイダ・スクールは、経験豊富な映画人と若い作り手たちが出会う場所として設立されました」とマルチェフスカ氏。創設者はワイダと、監督・脚本家のヴォイチェフ・マルチェフスキだ。
ポーランドには、ワイダ自身も卒業したウッチ映画大学など映画を学ぶための教育機関が複数あるが、ワイダ・スクールは、「基本的には、映画のABCを学ぶ場ではなく、作りたいプロジェクトがある人のための場所」だという。「いわば『大学院』的な場ですが、映画学校を卒業しているかどうかは問いません。監督あるいは脚本の経験がある人、ジャーナリストや俳優、舞台演出家なども受け入れています」
主要なコースには、監督(フィクション、ドキュメンタリー)、脚本家、プロデューサーに向けたものなど加え、国際プログラムもある。
いずれも、「生徒」それぞれのプロジェクトを、プロの「先生」たちと一緒に実践的に発展させていくスタイルを取るという。
紙からスクリーンへ
その教育理念を表す言葉が「紙からスクリーンへ」。たとえば、フィクションの監督コースであれば、作劇や演出などに関する知識を深めながら、それぞれのプロジェクトを磨きあげ、実際のセットで、プロの俳優、スタッフとともに、映画のエッセンスを凝縮するようなシーンの撮影に臨む。そうやって撮影したものを、ワイダ・スクールから巣立った後に発展させて、長編作品とし結実させる作り手も少なくない。
ワイダらが念頭に置いていたのは、「フィルム・ユニットの伝統」だという。フィルム・ユニットは社会主義時代のポーランドに複数あった映画制作集団。そこは、かつての日本の撮影所同様、制作プロダクションの役割を果たす一方で、創作の自由を担保しながら、若い映画制作者のプロジェクトを育てる場にもなっていた。「ワイダはこの伝統をどうにかして思い出させたいと考えたのです。そして私たちは、この伝統を守っています」
ワイダは「常に視覚的に考えていた」
国際コース「エクラン+(プラス)」は、パートナーとなっている国から選抜された若手監督・脚本家・プロデューサーのためのプログラムで、マルチェフスカ氏が運営を担当している。