ポーランド映画の現在地<4>…巨匠アンジェイ・ワイダの足跡たどる展覧会、つなぐ映画学校
映画で使われた小道具や衣装など、数々の貴重な資料が、ビデオプロジェクションやデジタル展示、随所に掲示されているさまざまな言葉の引用と響き合わせるように立体的に展示されているのも特徴的だ。
たとえば、展示品の一つに、「灰とダイヤモンド」で俳優のズビグニェフ・ツィブルスキが着用したジャケットがあるが、一歩引いてみると、奥の空間に同作の場面が映し出されているのが見える。コーナーを仕切る壁には、劇中にも出てくる言葉の一節(19世紀ポーランドのロマン主義詩人・劇作家のツィブリアン・カミル・ノルヴィト作「舞台裏にて」序章からの引用)が紹介されている。重層的だ。
オーディオビジュアルにも力点
展示の構成についてシスカ氏は「クラクフでは、より広いスペースを使っていましたが、東京でも最も重要な要素をクラクフと同じバランスで展示しています。映画をめぐる展示でもっとも重要なのは、音・音楽を含めたオーディオビジュアル(視聴覚)表現だと考えていますので、そこにも力を入れています」と話す。
「ワイダ監督は、日本映画に大きな感銘を受けていました。黒澤明監督はもちろん、小林正樹監督、市川崑監督の作品からも」と説明しながら、シスカ氏は、映像を映し出すモニターに向かって歩き出した。「そうした監督たちの作品には、アメリカの映画などには見られない芸術的表現があります。登場人物の緊張感に富んだ表情の見せ方などもその一つ。そうした映画に敬意をささげるような表現の一つが……」
そう言って、指し示した先に映っていたのは、「ヴィルコの娘たち」(79年)のワンシーン。大きく映し出された登場人物の顔は、確かに指摘通りのように見える。会場内で見せている抜粋映像も、ワイダとワイダ作品のさまざまな側面を伝える。
世代を超えて映画人が出会う「学校」
今秋、ポーランドのグディニアで開催されたポーランド映画祭で、2002年にスタートした、ワルシャワの映画学校「ワイダ・スクール」のアグニエシュカ・マルチェフスカ氏(同校・国際協力プログラム副ディレクター)からも話を聞く機会を得た。